黄金羊の観劇記

観劇・映画・読書の感想を好き勝手に書いてます。東宝・宝塚・劇団四季中心、海外ミュージカル(墺英米)贔屓、歴史好き。

ミュージカル「カムフロムアウェイ」感想

 

<20243/14(木) 14時公演 GC階A列10番台前半 日生劇場

ミュージカル界のアベンジャーズが集結したことで話題だった本作。私も1度見てみたく、チケット取ってみました。

周りの評判は上々で、自分で見ても確かに良作という印象。良作…では、ありましたが…うーん!!
これはブロードウェイ、というかアメリカで見た方が心を打つ作品だろうなあ…!!日本では難しいだろうけど、国籍や人種が多様なキャストでぜひ見たかった!!

これはアメリカでやってる舞台を日本語字幕で見られたらそれが一番良いだろうなあ。
もちろんそれは難しいから、日本で翻訳上演してくれたことには大感謝です。

 

演技力が求められるから日本ではスターを揃えざるを得なかったのだろう、と配役には納得。納得だけど、これはスターがやったら逆に魅力が削がれる、無名の人が演じてこそ意味があるし伝わるものがある内容だと思うので、全員名前も顔も知ってる実力は有名キャストの日本版は、やっぱり惜しい。全員無名のアンサンブルがやったというブロードウェイ版がその点も羨ましかった。

役者は上手いし曲も良いんだけど、この演目に関しては演技や歌が多少下手でも無名の役者達で見たかったな。スター役者の存在感がまず演目の中身を半分殺してしまっている。

でもこの演目でスター役者を揃えなければ更にチケット全然売れなかっただろうことは想像つく!!
今より良い舞台になったかもしれないけど、話題にならないしそもそも上演が難しそう!!

 

スターを揃えてはいるけど、スターのカッコよさを堪能できる演目ではないので、特に男性俳優ファンの人はそれ目当てに行ってもあまり楽しめないのではないかなと思った。
浦井健治さん、加藤和樹さん、田代万里生さんはカッコよさを完全に消してた。
個人的に一番カッコよかったのは濱田めぐみさん。

内容がエンタメではなく、史実を再編成したドキュメンタリーという感じなのですが、登場人物も個性的だったり存在感があったり、いわゆる「創られた魅力的なキャラクター(超人)」がいない。エンタメを追求している他作品と比べると、やっぱりワクワク感や楽しさが少ない。つまり魅力、求心力が低かった。

そして内容がドキュメンタリーでリアルなだけに、それを演じてる俳優の存在感、佇まいの違和感が大きく、見ていてしっくりきませんでした。

カムフロムアウェイはたぶん、私が今まで見てきた中で一番内容のリアリティが強い演目だったので、「演じている俳優にリアリティ(役との一致性)がない」ことがとても気になってしまった。

役者に庶民感・素人感が欲しい、それこそが一番必要な要素だと思うのに、全員ただならぬ玄人感漂いまくりなんだもんなあ。

せっかくのミュージカルスターアベンジャーズが、舞台にとっても役者にとってもマイナスの相乗効果になってしまっていて、すごく勿体無いと思いました。
スターはスタートして輝ける舞台で輝いて楽しませて欲しい。適材適所ってあるんだなあ。

 

登場人物たちにナレーション台詞(説明台詞)多いのもしんどかった。
確かに説明台詞がないと意味がわからないんだけど、ミュージカルにはキャラクター感情の発露を見にきている私は説明台詞が多ければ多いほどつまらなく感じるし、理解しながら作品についていくのが大変になるんだよなあ。(ルキーニの大量の説明台詞をリーヴァイ先生の極上の音楽に乗せることで観客に快く聞かせているエリザは神業だったのか、と今回思った)

役者さんは衣装や演技で演じ分けをしてくれていたけど、登場人物が多くて台詞が速く、話や役を理解しながらついていくのに少し疲れてしまいました…。(終演後、1幕100分の舞台で良かった…と思った)

全員日本人が演じていているのも見た目の分かりにくさを助長している。イスラム教徒の役とかは、見た目でそうだとすぐわかるキャストで見たかったなあ。

役者12人が様々な人を演じるのは演劇として挑戦的で面白くはあるけど、分かりにくさを助長していた。無名の人が少人数でコンパクトにやった方が良い舞台なのだろうけど、全員日本人キャストで日本版をやるなら、1人あたりの配役を減らして、別人だと分かりやすくするための衣装を増やしてくれたらもっと見やすかった気がする。(そんなことしたら制作の手間と費用がだいぶ上がってしまうだろうし、無理なのはわかる)

 

お話は人間愛が貫かれた優しいエンドなんですが、背景の情勢(911)が過酷なせいで見て楽しい気分になれる演目でも個人的にはなかったなあ。さわやかだけどずっしり重い。

 

…という感じで、個人的には刺さりませんでしたが、質の高い良い舞台ではあったと思います!

ブロードウェイ版の配信とかがあったら見たいな〜。

 

 

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」2回目感想 〜単純明快、若者の純愛物語〜

<2024/3/10(日) 12時15分公演 N列10番台センターブロック>

ハリーポッターと呪いの子、2回目観劇!!ようやく行けました〜〜!!

ハリポタ舞台を私が観劇したことを最近夫が知り、「自分も見たい」と言われてキャストを調べたらちょうど日曜昼間に見たいキャストが揃っている日があったので、ダメ元でゴールデンスニッチチケットに応募したらまさかの当選。

今まで何度申し込んでも当たらなかったのに!!!奇跡起こったーーーー!!!!!ありがとうございます!!!!!(今回初めて応募後にTwitterでツイートしたのですが、当選確率上がるって本当だったんだ…びっくりした…)

 

 

当日いただいた2枚のチケットは、1階N列センターブロック。

まさかのSS席!!!!!!!ウワーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!(嬉しくて泣いた)
前回はJ列の上手側サイドブロックで見て、近くて大迫力で良かったけど、少し近すぎて舞台の展開について行くのが大変だったので、次はもう少し後ろのセンターブロックで見たいと思っていたのです。望みが全部叶った…。(そんなことある!!???って腰抜かした)

 

ちなみに正規のお値段はこちら。


土日は1枚19,000円のSS席を、1枚5,000円で2枚買わせていただけました。

ありがとうありがとうゴールデンスニッチチケット〜〜!!!!(拝む)

 

視界はこんなかんじ。見やすい〜〜嬉しい〜〜〜!!!

 

今回は観劇前に原作1巻(賢者の石)、映画版4巻(炎のゴブレット)を復習してからの観劇でした。

1回目より内容の解像度が格段に上がりました。特にトライウィザードトーナメント関係の細部の台詞や意味が分かりやすくなったので、やっぱり4巻の内容は初回観劇前に復習しておけば良かった…!!

各課題の内容とか、小道具のエラコンブとか、「わかる…わかるぞ…!!」ってなりました。

原作小説を読み返したら完全に親・先生の目線で、細部の印象が随分変わりました。初読時は子供・生徒の目線で読んでいたので、当時は不可解だったことが今はストンと納得できたりしました。

ダンブルドア先生がどうしてハリーをダドリー家に預けたのか、とか。「どうしてこんな酷いことしたんだろう」と昔は思っていましたが、「魔法界では有名すぎる。環境がよくない」という大人の配慮、今はすごくわかるし納得できるんですよね…。

ハリーを守る魔法が母親の愛であることも、ローリング先生が乳飲み子を抱えながら書いた物語だからこその実感のこもった設定。やはり大人が書いた物語ですね。

呪いの子も親子愛の描写が多く、現在子育て真っ最中の身として覚えておきたい台詞が多々あります。ハリーの両親が殺される場面では毎回泣いてしまう。また脚本読み直したいです。

 

で、舞台の内容ですが、最高でした。

今回はシリアスとコメディの塩梅、緩急のバランスが理想的でした!!

私は笑って息を抜ける場面が多い舞台の方が基本的に好き。そしてこの舞台の笑いの8割を担ってくれてる門田スコーピウス、ほんと好き。

一幕ラストから2幕序盤、門田スコーピウスが完全に主役。
門田スコーピウスを絶対にまた見たい見たいと思い続けていつの間にか1年以上経っていましたが、ようやくまた見られました。更にオタク挙動不審に磨きがかかってて最高だった。存在感とキャラ立ちが素晴らしい。

大貫ハリーは、石丸ハリーに比べて原作ハリーに近い印象でした!!優しさが滲み出ていた石丸ハリーに比べると包容力低めで年相応、40歳前後でまだまだ自分を制御できない若さもある感じ。でも後半は石丸ハリーよりコメディ演技がある!!可笑しくて可愛い!!
藤田アルバスは思春期の不安定な等身大の青少年!!前回見たアルバスよりはキレ度が低くて妥当な迷走という印象!!
ハリーとアルバスのキレ方が良く似ていて、似た者親子感がめちゃありました!!あれは演技で似せてたんだと思います。嬉しい〜〜!!

れなちゃんハーマイオニー、声が良い〜〜!!しっかりしてるんだけど可愛い、これはロンも惚れるわ!!

石垣ロン、コメディ演技が上手い!!愛嬌があって可愛い、これはハーマイオニーも惚れるわ!!

松田ドラコ、ドラコもこの舞台では本当に良いパパだよね…ハリハーロンとの掛け合いでは愛嬌も出てきて可愛い。これは惚れる。

全体的にみんな可愛くて好きになるキャラだった!!一番当たりがキツイのは大貫ハリーに見えたけど、大貫ハリーも後半可愛いから愛せる!!

 

そして今回は…全体を通した物語が、アルバスとスコーピウスの純愛に見えました。

原作を読んだ時は、最後の展開でスコーピウスはローズが好きなんだと思ったし、この日の舞台では途中アルバスはデルフィが好きなんだと思った(本人も舞台上でそう言ってた)んですが。

スコーピウスにとっては最初から最後までアルバスが大事で、ローズは文字通り「お友達」候補なんだな、と役者さんの演技で思えて。
そしてアルバスはデルフィに失恋して、最終的に「スコーピウスが世界で一番大切な人」と自覚する

終盤の「僕たち別のバージョンになった」で、「あ、この二人くっついた」とストンと思った。
ラスト、アルバスがハリーに「世界で一番大切な人はスコーピウス」と言って、親への報告も済ませて、周り公認になった。

脚本を読んだ時は、「アルバスとスコーピウスが主役で、絆を深めていくことがメインの話ではあるけど、最後にスコーピウスがローズにアプローチしてるからこの二人は友情止まり。少し中途半端」という印象。

初回観劇時は、アルバスとスコーピウスより「ハリー・ロン・ハーマイオニーが主役」という印象で、この二人の話はそもそも脇筋。

今回初めて、呪いの子が「アルバスとスコーピウスが、艱難辛苦を乗り越えて純愛を実らせる明快なラブストーリー」に見えました。

これだよ!!!私はこれが見たかったんだ!!!と今回気づいた。やっぱり筋は単純な方が良いわ!!!

おめでとうアルバス、おめでとうスコーピウス!!末長く幸せに暮らしてください!!!

 

総括として、100点満点で200点の舞台でした。

展開が早くて疾走感があって、長いけど長さを感じさせない。長台詞を高速で喋ってる役者さん達は大変そう。時々聞き取れないこともあったけど大体は聞き取れた。(滑舌頑張っていらっしゃる…!!)

鞄を色々な物に変化させていく見立て、舞台ならではの演出。ぐるぐる回る階段も火を吹く杖も、吸い込まれる電話ボックスや人が飛び出てくる暖炉も何もかもが驚きで楽しく、「生の舞台で見る」楽しみを大満喫できる素晴らしい舞台。

 

個人的に心を盛り上げるテンションぶち上がり演目、という訳ではないので個人的今年ベスト舞台がこれになるかはわかりませんが、キャスト、舞台としての演出、魔法のような舞台装置、脚本の面白さ、エンターテイメント性などの総合点で、これ以上の舞台はなかなかないだろうと思います。

 

そして今日のキャスト陣。見ていて気になる、別の人で見てみたい、と思うキャラが一人もいなかった。全員が存在に違和感がなく、愛嬌があり、共感でき、行動を理解でき、魅力的で、演技も良かった。

ありがとうハリポタ舞台!!!満足しました!!!完璧!!!!

 

…なので、もうこれ以上リピートしなくていいかな、とちょっと思ってしまいました。笑

今後もうこれ以上自分の中で理想のキャスト、理想の座席位置、理想の値段が揃う完璧な観劇体験をできる機会はこない気がするのです。特に、私がハリポタ舞台で一番魅力を感じるキャストだった門田スコーピウスが6月末で卒業してしまうし。

でも良い舞台なので、今後もう見ない!と決めるのも勿体無いかな。未見のキャストが揃う日を狙ってまたゴールデンスニッチチケットを申し込んで、当選したら見ようかな。

 

冥土の土産になる素晴らしい観劇体験をまた一つ出来ました。

ロングラン上演ありがとう、大好きだよ呪いの子〜〜!!!

 

 

 

三谷幸喜新作舞台「オデッサ」感想 〜ありがとう三谷幸喜〜

<2024/1/28(木) 13時30分公演 1階V列20番台前半 東京芸術劇場プレイハウス

 

あーーーーー楽しかった楽しかった楽しかった楽しかった、ありがとう三谷幸喜!!!!!!

さてこのオデッサ、何年ぶりかのストプレでした。同じく三谷幸喜作・演出&かっきー主演の「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」は生で見られなかったので、オデッサは絶対見たかった…!!ご縁があったのが休日のチケットだったので、夫に娘を託し若干無理して観劇しましたが、無理して良かった最高だった、も〜〜〜めちゃくちゃ面白かった!!!!笑いまくりました!!!

チラシを見た時点ではもっとシリアスな舞台なのかと思っていたのですが、蓋を開けたら抱腹絶倒ドタバタコメディだったので、それをもっとアピールしてほしかったよ〜!!!ここ数年ずっと明るくて楽しい上質なコメディ舞台を求めているんですよ私は。

(以下ネタバレも含む感想です。未見の方はご注意ください)

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劇団四季「美女と野獣」2回目感想 〜新曲「チェンジ・イン・ミー」咀嚼〜

 

<2024/1/17(水) 12時30分公演 S席1階4列40番台後半 舞浜アンフィシアター

 

美女と野獣、2回目見て来ました!!
はあああ〜〜楽しかった…やっぱり多幸感が溢れてくる演目!!!好き!!!

 

前回はC席で見て、楽しかったんだけどやっぱり遠かったので、次回はもっと近く、できればセンターブロックで見たいなと思っていたので、実行しました!(前回の記事で値上げ前にもう一度見たいと言っていたけど、ウィキッド等他の演目を優先していたらリピートが値上げ後どころか年を超えてしまいました…ロングランしてくれて良かった)

4列目、めちゃくちゃ近い。表情が見える!!オペラグラスを使わなくてもオペラグラスより大きく自分が見えて、肉眼で表情が見える感動!!すごい!!

正直近すぎて、特定のキャラの顔や動きを凝視していて物語の進行と場面の転換においていかれる(気がつけば場面が変わっている)ことは何度かあったので、前方席に座るのはリピート回で良かったと思いました。初見でこの近さだと物語をきちんと把握できなさそう。4列目センターでそうなんだから、1〜3列目のましてやサイドブロックだったらより厳しいだろうな。

首や肩も疲れるし、チケット代もかかるし、特に凝視したい役者さんがいて何度も見る演目以外は、安い席で後方から1回だけ見るスタイルが私にはいいな、と思いました。やっぱり観劇は7〜10列目くらいが一番いいなー。(そんな良席で見たことほとんどありませんが)

ただ、臨場感と没入感がすごいし、普段豆粒サイズで見ている登場人物達が人間の大きさで目の前にいる感動はとても大きく、本当に嬉しかったです。ビルもビーストもモーリスも、ガストンもルミエールもコッグスワースも、皆目の前で「生きて」た…!!

実は前回からルミエールに推し(某墺国宰相)を重ねて見ておりまして、出てきて喋ったり動いたりしてるの見るだけでもう楽しいのに、大きなサイズで目の前で動いて喋ってくれる楽しさと幸せと言ったらなかったです。
今回もビーアワゲスト最高でした〜〜!!頭上に降ってきた金テープ、キャッチできました〜〜!!!神様ありがと輝く夜に!!!(テンション↑↑↑)

 

そして追加曲「チェンジ・イン・ミー」、今回は歌詞をよりしっかり聴き取れて、咀嚼しながら鑑賞できました!!

「もう子どもの頃の夢 

 手放してもいいわ

 今の私が好き」

って歌詞がグッサグサに刺さって大変でした。私自身が夢を諦めて大人になった立場で見たからもう刺さりまくり。

こんなにハッキリと、主人公が夢を諦める物語あった…!!?

美女と野獣、新演出で子供より大人が見た方が刺さる演目になってる気がする。
子供にはわからないでしょ、この曲の…沁み具合が…!!!

 

「ベルと野獣が出会って恋に落ち、結ばれて幸せに暮らす」という物語はそのままなので、「相手の外見にとらわれず、本質を愛する」「孤立している孤独な者同士が心を通わせる」といったテーマは変わらないのですが、その恋物語を外から囲むひとまわり大きな物語の構成が、旧演出と新演出で変わっているんです。

旧演出のミュージカルや、これまでのアニメや実写映画の美女と野獣は、構成的に「村を出て広い外の世界へ出たいと願っていたベルが、村の外の城という外の世界に行き、そこで幸せを見つける話」になっていたと思います。お城は「村の外の世界」ではあるので、ベルは「外の世界へ行きたい」という願いを叶えた、という構成に(半ば無理やり)していた。個人的にはそこが旧演出版の物語の納得いかない点になっていました。お城は村の隣の森の中にあるからかなり近所だし、そこで幸せに暮らすことは、広い世界へ出ていくことではないじゃないかと。

新演出版は、「村を出て広い外の世界へ出たいと願っていたベルが、近くの城に一生閉じ込められることになり夢を奪われ絶望するが、そこで出会った人との愛という想定外の幸せを見つけた結果、昔の夢を手放して恋人や家族と一緒に城に留まる決意をし、新しい幸せを大切に生きていく話」になっていました。

ディズニープリンセスが序盤で歌う「I wish」ソング、だいたいみんな要約すると「外の広い世界に出たい」って言ってるけど、その夢をバキバキに折られて「私の夢は叶わなかった!!でもいい!!今の世界と自分が好き!!」って最後に言った主人公、今までにいた?というか美女と野獣、そんな物語だった??

というのはまあ言い過ぎですね。ベルは昔の夢を「諦めた」とは言ってない。「手放した」と言ってる。そこもいいんですよ!!!!(膝打ち)

「諦めた」というとネガティブだけど、ベルは昔の夢が叶わないことに対してそんなネガティブな悲しい気持ちは抱いていない。「手放した」という言い方はまさにその通りだと思います。昔の夢を叶える必要がなくなった、もう昔の夢を追う気持ちが自分の中でなくなった、そういう心境だから「諦める」ではなく「手放す」なんだろうと。

チェンジ・イン・ミーは、歌詞を噛み砕くと、こういう意味↓だと思います。

 

「以前は、外の広い世界に出て自由に生きたいと思っていた。

 そんな自分は子供だった。

 城に閉じ込められて自由を奪われるという絶望を経験したけれど、

 そのおかげで自分の本当の理解者、愛する人を見つけた。

 その人と一緒に生きていくことが今の望み。

 だから昔の夢はもう必要ない。

 夢を見ていた頃よりも、今の方が本物の人生を生きていると感じる。

 そして、私はそんな今の自分が、昔の自分よりも好き。」

 

沁みすぎて涙で前が見えない。

美女と野獣美女と野獣ラブロマンスだし、城の愉快な仲間達は楽しいし、物語もわかりやすいので、子供や10〜20代の人にももちろん楽しんでもらえる演目だと思いますが、

「チェンジ・イン・ミー」の追加で、子供の頃の夢を手放した経験のある、でも今は今で幸せに生きている、30代以降の大人達にグッサグサに刺さる演目になったと思います。

新演出版でこの曲を挿入するのが、従来の美女と野獣の構成上無理があった点を解消するためにディズニーが出した解なのか、そうか〜〜!!!ありがと〜〜!!!

 

ベルは野獣の所に戻ってきたし、ベルの昔の夢がそのうち叶うこともあるんじゃないかな。

魔法が解けて野獣も城の皆も人間に戻ったんだから、野獣とベルの2人でも、パパ入れて3人でも、城の愉快な仲間と大勢でも、いくらでも広い世界に冒険に出られるでしょ!

これから夢も叶えていきな!!幸せになりな〜!!

と思わせられて、終演後に余韻も広がりました。

 

ベルというキャラ、今まで「読書好き」「集団の中で孤立している変人」という点には共感しつつ、「美人」という点が(私には)自己投影を難しくするキャラだったけど、新演出版では「変人と言われる孤独」の強調や、この「昔の夢を諦めて今の自分を肯定し、新しい幸せを大切にする」という考え方の追加で、共感度が鰻登りになってます。

旧演出版より、ベル内面の成長が感じられる。愛することとはなんなのか。野獣はベルを手放した。ベルは最初に父親を助けるために自分の自由を、次に野獣と生きていくために昔の夢を手放した。2人とも大切なものを手放す経験を経て大人になった…。
より人間的に深みがあり、わかりやすく成長を感じられるキャラになった新演出版ベル、大好き!!!

 

ディズニーの「美女と野獣」の中で、新演出版ミュージカルが一番好きかというと、2回目bの観劇でやっぱり物足りなさは強くなってきたので、私は出来るならアニメと旧演出ミュージカルと新演出版ミュージカルをぐるぐる回りたい派ですね!!

新演出版は特に二幕が駆け足で、

・お父さんが狂人と見なされて追い詰められてることがわかりにくい

・扇動された村人はその後どうなったのか気になる

など消化不良点もあるので、四季の新演出ミュージカル版はアニメか実写の映画を見て予習して、そのあたりを補足してから見るのがオススメです!

 

シネマ歌舞伎「唐茄子屋 不思議之若旦那」感想

<2024/1/9(水) 11:30〜 シネマイクスピアリ

 

お、面白かったあああ…!!!

以前見た三谷歌舞伎(月光露針路日本 風雲児たち)がコメディの皮を被ったどん底過酷演目で若干トラウマになっていたのですが、このクドカン歌舞伎はどストレートのコメディ!!

吉本新喜劇見に来たのかと思うほど現代の言葉と感覚で絶え間なく続くボケとツッコミのオンパレードで、創作歌舞伎ってこんななの…!?と感動しました!!会場も私もドッカンドッカン、とっても楽しかったです!!!

歌舞伎ってもっと時代がかった内容&言葉なのかと身構えていましたが、ここまで現代的で楽しめる演目もあるんですね〜!!前回三谷歌舞伎に期待して空振りしてしまったものを今回見させてもらえて満足です!!

 

ストーリーは単純で、主人公であるお金持ちのドラ息子の若旦那が、親に勘当されて自殺をはかり、助けてくれたおじさんのはからいで唐茄子(カボチャ)の行商人になり、お金を稼ぐ苦労を身につけつつ吉原に遊びに行きたがり、そこで不思議な生き物に出会ったり変な世界に迷い込んだり…というお話。

不思議の国のアリスのパロディということで、もっと序盤でウサギのようなキャラクターが出てくるのかと思いましたが、不思議の国へ迷い込むのは中盤も過ぎてからで、不思議の国の場面や主人公の滞在時間は予想より随分短かったです。そこがメインの話ではなかったですね。

(以下ネタバレ)

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ミュージカル「それいけ!アンパンマン まもれ!黄金の炎」感想

<2023/12/2(土) 10時45分公演 S席1階16列20番台後半 市川市文化会館大ホール

 

1歳の娘と一緒に観に行ける映画や舞台を探していて見つけた演目。小さい子はみんな大好き、アンパンマンのミュージカル!

横浜アンパンマンミュージカルのショーをYouTubeで娘が喜んで見ていたので、あれの長い版を横浜まで行かず市川で、席取りもせずに事前購入チケットでゆったり見られるなんて素晴らしいと思い、2023年の観劇納めはアンパンマンにしました。

これまで高校の文化祭で「サウンド・オブ・ミュージック」を見たり、ディズニーランドのフォレストシアターでショーを見たりした経験はあった娘、ついに有料観劇デビュー。私も初めて親子3人で観劇でき、感無量でした!!

チケットはS席3,900円、2歳以下は大人の膝の上で鑑賞するなら無料。3人で7,800円で済み、あらゆるチケット代が高騰している折、この値段はお財布にも優しく嬉しかったです。

 

客席は小さなお子さんがいっぱいで、手拍子や掛け声でザワザワしっぱなし。「子供が声を出していい、騒いでいい」という普段とは真逆の劇場空間は、安心して子供と一緒にいられ、「親子で観劇できる、こんなミュージカルもあるんだ」と、嬉しくて涙が出そうでした。

バイキンマンドキンちゃんアンパンマンカレーパンマンしょくぱんまんジャムおじさんにバタコさんと、有名なキャラ達が次々に登場し、客席は大盛り上がり。キャラクターの名前を呼ぶ大きな声、「あぶなーい!!」と叫ぶ声。客席は映画の応援上映のような雰囲気。途中「手のひらを太陽に」の振り付け解説もあって、終盤にみんなで歌って手を振ったりしました。参加型楽しい!!

物語は決して難しくはないものの、二幕90分の舞台はまだ1歳8ヶ月の娘にはやはり集中力がもたなかったようで、二幕の途中からは席から出たがる娘をなだめるのが少し大変でした…。でも、知っている曲が流れるたびに娘の興味も戻り、なんとか最後まで観劇することができました。

 

使用楽曲はすべてオリジナルなのかと思っていたら、アニメのEDアンパンマンのマーチ、サンサン体操)やたくさんのキャラクターソングアンパンマンカレーパンマンしょくぱんまんが3人で歌う「ぼくらはヒーロー」や、バイキンマンドキンちゃんの曲、ジャムおじさん・バタコさんが歌たう「おいしいパンを作ろう」、天丼マンの曲など)が使われていて、思った以上に音楽を楽しめました!OPやEDはYouTubeで、キャラソンはCDで普段から親しんでいたので。知っている音楽が流れるとテンションが上がりますね!

 

着ぐるみの登場キャラクター達のほか、アンパンマン号やダダンダンなど、期待以上の大物も登場して舞台を盛り上げてくれました。

 

物語の展開も早く、総じて「子供を飽きさせない・退屈させない・楽しませる」ことに最適化し全力を尽くした、素晴らしい子供向けミュージカルでした。

独身〜DINKS時代に比べ、出産後観劇はしにくくなりましたが、「子供がいても一緒に観劇を楽しめる生活が送れる」という希望が持てたことも嬉しい。今までは子供を夫に預けて一人で観劇に行くことが多かったけど、一緒に楽しめるなら一緒に楽しんで行きたい。でもそれは劇団四季の親子観劇とか、もっと娘が大きくなってから、少なくともあと10年くらいは無理だと思ってた。

こんな演目もあるんですね〜!!子供を産まなければ一生縁がない舞台だったろうし、自分の世界がまた一つ広がって嬉しいです。

楽しませてもらいました。ありがとうアンパンマン!!

 

親子で楽しめる舞台だと、アンパンマンの他には「おかあさんといっしょ」などEテレ系のステージなどもありますね。

あと、 TOHOシネマズは赤ちゃんと一緒に入れる「ベイビークラブシアター」を定期的に開催しているし、他の映画館も同様の企画をやっていることがあるので、日を選べば映画も楽しめそう。

幼い子供と一緒でも趣味を楽しんで生きていきたいので、これからも色々探して試していきます!

 

映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」感想

<2024/1/4(木) 13:35〜 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ

 

X(Twitter)でキャラデザの方のイラストを見かけ、公開前から気になっていた作品。

年末見ようと思っていたら「トットちゃんが傑作」との評判も耳にし、早めに見た方がいい(上映回数の減少が早そう)なのはトットちゃんだと判断し、まずはトットちゃんを鑑賞。

年末にコミケでの盛り上がりの様子をTwitterで眺めつつ、年明けにようやく観に行くことができました!!

当日は夫と一緒の鑑賞だったので、腐萌えしたらどうしようかと思っていましたが、私は腐萌えはしませんでした!でも腐萌ポイントは理解でき、作品としては純粋に面白く、非常に良い塩梅で見させていただきました。

 

目玉の親父があまりにも良いお父さんで…これはイケメン、あまりにもイケメン、これは惚れるわ…そしてこんな良い男が惚れてる岩子さんも相当良い女なんだろうなと思わされました。素敵夫婦…!!

 

自分でもこの作品を見るまでこんなところに傷があるなんて思わなかったんですが、私、水木の昭和のモーレツサラリーマンぶりが何故か嫌な意味で胸に刺さって見ていて苦しかったです…。
自分の父親が、あそこまで強くは無いもののややあんな感じの価値観で人間だったせいかもしれません。自分はあんな生き方、あり方はしたくない、令和になって良かった、令和の働き方と生き方の方が私はずっと馴染む…と、しみじみ思いました。昭和の人間の解像度が高くてしんどかった。

 

PG12納得のグロシーンは覚悟していたけどやっぱりキツかったのと、何より時貞とかいうクソジジイがマジで胸糞、視界に入れるのも台詞を聴くのもしんどいレベルなのがリピート意欲を削がれる…。

 

でも昭和の生活や戦争の描写は丁寧で良かったなあ。

列車内で漂うタバコの煙、因習村の美しい風景、水木先生の実体験を元にした悲惨な戦争。

アクションシーンでは輪郭線が波打って驚いた!カメラワークも勢いもすごい。

話もサクサク進んで退屈しないし、沙代ちゃんや時弥くんは可愛いし(でも2人とも可哀想すぎて辛い)、音楽も美しいし、最後にはカタルシスもあるし、グロと胸糞を差し引いても印象に残る良作で、トットちゃんに続き、こちらも映画館で集中して見られて良かったと思う作品でした。

 

お墓から生まれて来た鬼太郎がムチムチで可愛すぎて、もっと赤子の鬼太郎見ていたかったです。一瞬すぎるー!!!

生まれた直後から新生児ではなく生後数ヶ月の姿なのは、お母さんのお腹にずっといる間に成長していたってことなのかな…岩子さん…泣。

ラストのゲゲ郎と岩子さんがあまりに辛いのと、それでも生まれて来てくれてありがとう鬼太郎の気持ちと、全員幸せになってくれよ!!!!の気持ちと、赤子鬼太郎が鬼のように可愛い!!!!!!!!!!の気持ち、鑑賞後は色々な気持ちがぐるぐるしていました。

親父と岩子さんと水木の幸せ育児編を永遠に見ていたいよー。それだったらリピートしたいよー。悲しい。

 

〜「墓場鬼太郎」1話をYouTubeで視聴〜

お……おぎゃーーーーーーー!!!!!!

墓場鬼太郎1話を見てみたら、見事にゲ謎をもう一度見たくなりました…おぎゃあああ…。
上で水木はモーレツサラリーマンぶりがちょっと…と言っておりますが、墓場1話を見た後はむしろその働きぶりを見られて良かった…と感想が一変。墓場の水木は会社で一生懸命働いてる様子がないしいつも暗くて元気がなくて、正直共感も好感も難しかった。でもゲ謎で戦争体験が詳細に描かれたから、あんな過去があったらそりゃ人生も価値観も狂うというか、独自のものになるよなって納得できた。

戦争生き残りからのモーレツサラリーマンからの、親父と岩子さんと鬼太郎から愛を知ってからの、社畜脱却マイホームパパ水木…なんですかね…ひ、ひえーーーひえーーーーうひえーーーーーそれはひえーーだわーーーゲ謎スタッフ上手いわーーーー!!!!!!!!

そして墓場1話と対応するゲ謎のエンドクレジット部分を舐めるように見たい…見て思いを馳せたい…あと赤子鬼太郎を抱きしめる水木の静止画をビジュアルブックに載せて欲しいしゲ謎の入場特典イラストも全部手元に欲しくなる、わかる。(入場特典はゲット出来なかったけどどんな内容かは知っている)親父も水木も良いけど、ちょうど1歳の赤子を育てている身なので、岩子さんが鬼太郎に頬擦りしている第三弾の特典イラスト、感情移入して泣いてしまった…。

 

トットちゃんもゲ謎も、子供や子供の誕生が題材の話なので、婚活中や不妊治療中だったら辛くて見られなかった気がする。自分が人生のどのステージにいるか、どんな環境かによって享受できるエンタメの幅が変わるし、見方や感想もガラリと変わることにしみじみします。

最近は子供が出てきたり、子供が活躍する作品を見るのが好きなんですが、昔はそういう作品を子供の立場で楽しんで、今は完全に親の立場で楽しんでいるので。

ようやく色々な作品をまた楽しめるようになってきたのは嬉しいことだけど、色々なものに触れるたびに辛かった過去の自分、その痛みも忘れないでいたいと思います。