Amazonが独自に製作したミュージカル映画「シンデレラ」を見ました!!
1度目の視聴時は英語音声字幕なし状態で見た為、物語の筋はわかるものの細かい台詞の意味がわかっていなかったのですが、
画面右上のアイコンから字幕や音声で日本語を選択できることを知って日本語音声(歌部分のみ英語音声・日本語字幕)で見てみたところ、解像度が爆上がりして段違いに楽しめました!!英語不得意仲間の皆さんは私のようにしくじらずぜひ最初から日本語字幕か日本語音声で見てくださいね!!
台詞部分もなんですが、予想外に歌部分の内容が良かったです!!やっぱりミュージカルは歌詞の意味がわかった方がいいですね!!継母と姉2人の歌は前後の流れで意味を推測することも出来ていなかったので、内容を知れて良かったー!!!
作中どの曲も音楽も歌詞も良くて、捨て曲なし!!全部良い!!
音楽も良いし画面もカラフルで華やかだしダンスも上手いし、カメラワークも飽きず話の進行テンポも良く、全体的にとても完成度の高いミュージカル映画です。とてもおすすめ!!
ラップの曲などもあり、歌い方も現代的で、歌詞の内容も登場人物の価値観・考え方も現代的。とにかく「古典作品の現代的リメイク」をわかりやすく前面に出している。「現代人の感性で現代人に合うように古典作品を再構築してみた作品」です。
(以下ネタバレ)
一番感心したのは、原作シンデレラが「一着目のドレスを自分で作っていた」点に着目し、シンデレラを「お裁縫が好き&得意で、将来は仕立て屋になりたいと思っている」キャラという設定にした点。その後の展開にも心情にも無理がない上、現代の人間が共感しやすい考え・行動をするキャラになって素晴らしいと思う。目から鱗の良改変!!
ファビュラスゴッドマザーが「助けてあげた芋虫が実は魔法使いで、羽化後に恩返しをしてくれる」という「善果の報い」な設定も、ただ幸運で妖精の加護があったという原作より良いと思いました。
継母にも新たな設定が付与されて突出した悪人もいなくなり、良いキャラと良曲と美しい画面とダンスを堪能できる、ほぼ欠点のない良作。
…と、初回視聴時は思ったのですが。
2回目の視聴で細部の台詞や歌詞の意味をしっかり理解した結果、形を変えて現代的になっていても結局「女の子のための御伽噺」なんだなこのシンデレラは。と思いました。
以下ネガティブな感想なので、目に入れたくない方はここで読了してください。
アマプラ版シンデレラ、徹頭徹尾シンデレラっていうか主人公の女の子に都合の良い物語なのがだいぶ気になりました。
まず世代間格差!!!
継母に共感&感情移入できる要素を取り入れた結果、王子の父である国王が「頑固で頭の硬い旧世代の権力者」というステレオタイプ悪役になってしまっていた!!それってどうなの!!?国王世代の男性可哀想!!!
次に継母!!!
いや仕方ないだろ、継母の生きた時代と状況的に「夢を追うより現実的に生きる方が人生はやり過ごしやすい」という考え方になるのは仕方ないわ!!!それをお前!!!若くて幸運に恵まれたお前がわかったように語るなシンデレラこの小娘!!!偉そうに説教垂れるな!!!!お前はラッキーなだけなんだよ!!!!と思わなくもなくなってしまった!!!
逆の立場だったらどうする!!お前!!40年前に生まれて夢も希望も諦めざるを得なかった子持ち主婦の人生を代わりに生きてみろ!!そして40年後に生まれて自由を謳歌し夢に邁進しそれを叶えたイディナ・メンゼルに説教されてみろ!!!絶対めちゃくちゃ腹立つと思うから!!!
自分の信念を主張するのは良い!!今はそういう時代なんだからそういう考えで生きるのは普通だし輝いている!!!
でもだからって前の時代の状況の中で懸命に全力で生きた人を見下したり貶したりするな若造が!!!と思った。
・シンデレラの考え方=先進的で現代的で正しい。皆こうありたいと考える理想
・継母の考え方=前時代的で古くて間違っている。こんな人生を歩むのは嫌、可哀想
という単純な図式になっている上、最後に「シンデレラから継母に手を差し伸べる」(赦しを与える、救いあげる)という構図があったのが更に嫌だった。
お前えええええ前時代に苦労した人間に敬意を!!!!払え!!!!
あと王子の選択もなんなんだ!!1回目は気にならなかったけど2回目視聴で一番気になってしまった!!
幼少から次期国王になるために教育されて生きてきたんだから、どう考えても玉座の方が大事だろ!!!!!
王位を継げ!!!仕立て屋志望の女と一緒になるために何もかも捨てるな!!!全国民に謝れ!!!!
これは多分四季版アナ雪を見てモヤッた点と同じことなんですが、個人の意志と愛と自由という名の我欲の為に全国民を投げ捨てるな!!!!責任感の欠片もないのか!!!???
いやもうまあそんな王子だったら国家を背負いたい妹が女王になった方がそりゃ良いわけですが!!!よかったね国民の皆さん!!
この王子、物語的には「女性の夢を理解し、その夢を叶えるために寄り添うことを選んだ理想の伴侶」として描かれていたと思うんですが、そこにまた違和感がありました。王位と国民をぶん投げた時点で、私にはこの王子がそこまで魅力的に思えなくなってしまったので…。
そしてシンデレラも1回目の時ほど魅力的に見えなくなった…。
自分が仕立て屋になりたいから王子の求婚を断る、王妃になるより夢を叶える方が大事、それは良いと思う。
でも別の人間を探せよ!!!!
王子に国を捨てさせるな!!!!自分との愛を叶える為に出奔さすな!!!
…と思ってしまったので、私にはアメリカの個人主義はちょっと個人偏重、責任放棄寄りに感じられるようです。
アナ雪といいこのシンデレラといい、アメリカ人が作る物語は王権の扱いが軽すぎになる傾向がある…?王家と玉座の重みが吹けば飛ぶような軽さしてるんですけど…あくまで子供向けのファンタジー物語だからそのへんは適当なのか、それとも建国時に王権と王家を否定する所から始り、今まで王家を戴いたことのないアメリカで作られるとこうなる風になるのか。どちらにせよ、「十二国記」を愛読して育った私にはどうも価値観が合わない。
まとめると、このAmazonオリジナルシンデレラは「若くて美しい活発な女の子が、精力的に活動した結果夢も愛も掴んだ話」という、現代の若い女の子だけに都合の良い、その年代の女の子だけが楽しい話になってるなと思いました。
同世代男性(王子)、年上男性(国王)、年上女性(継母)のキャラクターはすべて貶められている、他カテゴリの全ての人々に喧嘩売ってるスタイルに見えた。
作中の人種ごとの起用率やフェアリー・ゴッドマザーをドラアグクイーンにしている点など、「多様性に配慮していて現代的でしょ!」という盛大なアピールが画面を通して伝わってくるけど、空振りしているのでは。
継母も王子も国王も、みんな力強く夢を叶えたシンデレラに感化された結果「先進的で正しい」考えをするようになりました、めでたしめでたし…という一方的な描き方なのが気持ち悪かった。もっと人間を多面的に描いて!!!色々な立場や人々の正しさと心情を見せてッ!!!
主人公至上主義でご都合主義で、シンデレラに心底共感して鑑賞できる10代の女の子専用の夢物語。「現代的リメイク」という皮を被せられているだけで中身は御伽噺だな、と思いました。
とまあ色々思うところはありましたが、Amazon版シンデレラ、曲も絵もダンスも良いし演出も良いと思うし、初回鑑賞時はこれらツッコミどころも全然気にならなかったので、本当に完成度の高い良作ではあると思います。
私のように捻くれた考え方してない人の方が多いだろうし、純粋にめっちゃ楽しめる人の方が多いと思うので、機会があればぜひ見てみてください。楽曲がいいのでサントラもオススメ!!