黄金羊の観劇記

観劇・映画・読書の感想を好き勝手に書いてます。東宝・宝塚・劇団四季中心、海外ミュージカル(墺英米)贔屓、歴史好き。

「西郷どんと明治偉人さん」感想

昔買った長州ファイブと明治殖産興業の同人誌が大好きで、以来ずっと追いかけてる著者の方が2018年に「西郷どん」のNHK大河ドラマに合わせて出していらした商業単行本。
先日ふと思い立って買ってみたらめちゃめちゃ良かった…出た時に買っておけば良かった!!
 
この方のキャラの中では長州ファイブや渋沢栄一・益田孝あたりが好きで、西郷隆盛には特に惹かれていなかったので今まで買わなかったのですが、蓋を開けてみたら長州ファイブもいっぱい出てて、何より過去同人誌のリメイクネタ満載で、それを教えてくださいよお!!!!って思った。昔読んだ好きだったネタが、今の上達して美麗になった絵で見られる喜び!!!
 
著者の相生リサコ先生は漫画の題材のネタに関してめちゃめちゃ勉強されていて、ページ内の情報量がすごくて読み応えがある上に、一つ一つのネタがどれも「一冊の参考文献を煮詰めて要約しました!!」感が滲み出ていて密度がすごい。
何度も読み返したくなる情報量、読んでて噛みごたえがある楽しさ!!
 
きっと現実は色々エグかったんであろうと想像できる事件や人間関係も読みやすくサラリと料理する漫画表現の仕方も上手い。(ただ、このあたりはプロパガンダ云々を気にされる方は気になるかもしれません。私はこの方の漫画に政治的思想や信条の何かを感じませんし、中立的なバランス感覚をもって描かれていると個人的には思いますが、明治政府とその関連人物達に好意的・肯定的な内容あることは確かなので)
 

そして、行きすぎないけどあって嬉しいBL度合いが更に好みにドンピシャなんですよね〜〜〜!!!
おそらく腐じゃない人には少し目につく、気になる、くらいのBL世界なんですわこれが。一昔前の二次創作オールキャラコメディ同人誌で、「主要キャラ複数がナチュラルにBL関係」という世界でめっちゃ落ち着く。実家感ある。
(もちろんBLが苦手な人には逆に読みにくくなる要素だと思うので、諸刃の剣かもしれない)
 
序盤はストーリー仕立ての西郷の前半生コメディ漫画(描き下ろし)、
中盤は1ページ1本の4コマ漫画&人物紹介(過去同人誌ネタリメイク)、
最後に西郷の最期のシリアス漫画(描き下ろし)
という構成も、時系列で事件や人物の関係がわかりやすく、しかも最後はきっちりしんみりできて読後感がよかった。ほのぼのだけで終わらない、胸に残るしこり、寂しさや悲しさ、重さは歴史物を読む醍醐味なのであって嬉しい。
相生先生が描かれた西郷像、そして「おそらくこれが西郷にとっての一番だったのだ」とこの本の中の話で表現されたことは、西郷のことをほぼ知らなかった私には目新しく、けれど自然で納得がいき、一人の偉人を解釈した読み物として面白かった。こういう人間もいそうだなあと。
 
今年の大河ドラマ渋沢栄一が主役だから、また単行本出されないかな〜〜!!と密かに願っています。
 

 

この方の描かれた井上勝(長州ファイブの一人。鉄道の創始者)漫画も面白いのでオススメです。