黄金羊の観劇記

観劇・映画・読書の感想を好き勝手に書いてます。東宝・宝塚・劇団四季中心、海外ミュージカル(墺英米)贔屓、歴史好き。

東宝「レ・ミゼラブル」2024年版感想

<2025/1/11(土) 13:00公演 補助席1階中列50番台端席 @帝国劇場>

 

今季最初で最後のレミゼ

改修前の現帝劇に入る機会もこれが最後で、レミゼもですが帝劇という舞台を噛み締めて来ました。

 

日比谷シャンテの1階に入っているパン屋「ル・プチメック」で買ったサバサンドをロビーで食べて昼ごはん。現帝劇ロビーで食べる開演前ランチもこれで最後と思うと感慨です。

 

レミゼに出会って、今年で20年。自分も歳を重ね、世界や社会の状況も変わってきました。

ぬくぬくとした劇場で、板の上に乗せられた見せ物としての貧困劇を観ている自分に一抹のグロテスクさと申し訳なさも感じたりもしつつ、やっぱりレミゼは面白かった。

 

石井ジャベール。

厳しさがないジャベール!!?真面目さ70良い人30厳しさゼロ!!?そんなことある!!??いやめちゃめちゃ良い人じゃない!!?滲み出てない!!??

正直、見る前は石井さんってジャベールやるには歌唱力が少し足りないのではという不安があったんですが、やはりミュージカルは総合芸術なのだなということを思い知らされた石井ジャベールのキャラの良さ。好き…!!

驚いたのがルックダウン(再)になって白髪混じりで再登場してきた時、それ以前より一段階低い声に発声を変えていたこと。すぐ気づくほど明らかに声を変えて(加齢を表現して)いたのは石井ジャベールだけで感動しました。あれは前回の出番から月日が相当経っているとわかりやすい!!観客に親切!!!

再登場後は3%くらい厳しさが存在してたけど、下水道から出てきて「1時間だけくれ!」というバルジャンに対して歴代見たジャベの中で最速の「行け!!」を繰り出していて、あなたバルジャンを行かせてあげたくて仕方かったでしょ感!!!

自殺めちゃくちゃ良かったよ〜〜!!!なんでこんな良い人が人生の迷路に迷い込んで苦悩して最後には自殺!!?完全に合ってない職業選んでしまっただけの不運パターンでは!!??

天国に行ける人は白いライト、行けない人はライト無しで死ぬ、という情報を胸に刻んで今回はジャベの自殺を見てたんですが、確かにこのジャベが救われるかというとそういうこともなさそうで、難しいし可哀想。良い人が悩んで迷って自殺して天国にも行けない世界ってなんなんだよ神よ…。

 

清水エポ。

総合力めっちゃ高い。可愛い声にオンマイオウンの突き抜ける声量と歌唱力、そして盗賊団の一員としても自然な俊敏な身のこなしと鋭さとはすっぱさ…!!すごく良かった!!!

 

近藤R。

純粋にビジュアルがめっちゃ好みで泡吹いて倒れそう。
えっスタイル良くない?足長くない?カッコよくない??二次元みたいなRが三次元にいる????
ありがとう…ありがとう…。

 

グラアン。

私の目は二つしかないので今日は割り切って他を諦めてグラアンだけを注視していたんですが、一幕でグラアンつきあってたように見えました…。

レッド&ブラックでRがアンジョの頬を触ってビックリしていたら、その少し後にアンジョもRの頬を撫で返していた。何????

ラマルクの死から熱狂していく学生達を客席から遠巻きに見てつらみを感じた。ああいうのって参加して一員になって熱狂の渦中にいると楽しいんだよなあ。

そして明かりに照らされて輪になるその学生達から離れた暗い影の中に一人でいたR、突然学生達の中に寄って手を突っ込んで何をしたかと思うと、熱狂する群衆の中にいたガブローシュを引っ張り出してきた。全私が感動して泣いた。

いや、やっぱりRは大人だった。あの場にいる誰より冷静で大人。子供を子供として認識してちゃんと避難させようとした。えらい。
ガブってすごく大人だし頼れるし、皆彼を一人前扱いするし、実際ガブはそれに相応しい精神をしているのだろうけど、ガブを実年齢なりの子供として扱ってくれる大人が、あの場に一人でもちゃんと居てくれて嬉しかった…。

戦力になる頼もしい子供は戦力扱いしたくなっちゃうけど、やっぱり子供なんだから危ないことには巻き込まずにあらかじめ遠ざけてあげることを考えてあげて欲しい。大人には。

今回出産後に観る初めてのレミゼで、出産よりも加齢の方が感想の変化に与える影響は全体として大きい気がしていますが、このあたりの感想は親になったからこそ出たものかもしれないなあ。

 

アンジョとグランとガブがもはや母父子いう構図は新演出でしっかり確立していたんですが、今日はガブ死からが初めて見る光景でした。

ガブ死の時、白いライトの照らす一直線の光の中に、ガブとアンジョとRの3人が上からまっすぐ並んで照らされていました。

そして撃たれて上から落ちてくるガブを降ろして抱え直したアンジョの図が、完全にピエタ(嘆きの聖母)像と一致。

小林アンジョも砦全体も、最初の「ここが俺たちの死に場所」からずっと地に足がついてる感じがなく、死ぬことや革命をどれだけ現実に捉えているのかわからない感じがあって、その後のドリンクウィズミーでもずっとそうだったんですけど、ガブが死んだ後ずっとアンジョは二の腕で顔を覆ってて、そのあと涙を拭くような仕草をして(実際には泣いていなかったように見えたけど涙を拭いたように見せたかったことは確かだと思う)その後死ぬ前の最後の歌、死のう、とか死ぬのだ、とか、この最後の「死ぬ」の台詞でようやくアンジョに死ぬ覚悟ができた、死ぬことを受け入れる腹がくくれた、という感じがしました。

アンジョは死ぬ前にRと見つめ合ってハグしてたんですけど、私にはこの二人が、完全に「子供を喪って、自分達も死ぬことを決めた両親」に見えたんですよね…。子供(ガブ)を喪ったことで、腹を括って後追い(心中)をしたように見えたなあ。

(余談ですが、今回アンジョが前のめりに倒れながら落ちていく様子がなんかダイナミックにえらい勢いで吹っ飛んでいってるように見え、ご本人あんな勢いで落ちていって怪我とか大丈夫なのかとハラハラしました)

その後、ガブの遺体が舞台の隅に打ち捨てられているのが可哀想で辛いと思っていたら、回収されてアンジョと同じ荷台に乗せられて…良かったねえ、親子一緒に戻れたねえ、と涙しました。願わくばそのまま、二人一緒に埋葬してあげてほしいと思いました。Rの遺体はどこにいったんだろうなあ…。

 

端席のこと。

今回は文字通りの端っこの席で、レミゼをこんなに端っこで見るのは初めてだったんですが、びっくりするくらいオフマイクの声がたくさん聞こえました。
いつも他の方の感想読んでいて、そんなにオフマイクの声聞こえたことないけどな〜と思ってたんですが、席によっては聞こえるのかもしれません。

合唱の声の厚みやオケの音の響きもいつもより明瞭に感じられて、全体的に音がよく聞こえた気がします。これが…壁際の音響…!!?

当選した席が端っこだと知った時、あちゃー端っこかーとか、お正月の間に首を痛めてしまったのでずっと横を向いて見るの辛いなーとか思っていたんですけど、今まで見たことがなかった舞台の奥の方の景色や人物の表情が見られて良かったです。

やっぱりどんな席も敬遠せずにありがたく座らせていただく精神で座ってみると、新しい発見や楽しい経験があるんですねえ。
端っこ席は音響が良く、真ん中からは見られない景色が見られるので、リピート演目には大いにあり!
ただやっぱり目と首と腰は疲れました!!

 

レミゼを見ると、バルジャンや他の人々の生き様に自分も反省を促されますね。
私は大事な娘を放り出して何を観劇にうつつをぬかしているのだ、ごめんよ娘ーーー今帰るよーーー!!!と劇場を走り出た私が向かった先は。

 

日比谷シャンテのル・プチメック。

そしてリュバーブのデニッシュ(2個目)とその他のパンを家族へのお土産に購入しました。
こちらのパン、開演前にランチのデザートにと買って食べたら初めて出会う衝撃的な美味しさで、レミゼを見た後私をもう一度お店に走らせ2個目を買わせた逸品。リュバーブの酸味とチョコクリームの甘さとデニッシュのサクサク感のハーモニーが絶妙で最高でした。

アラフォーになりそれなりに経験も重ねて、人生で「感動」出来る機会がだんだん少なくなってきた中、数百円で感動できたことにまた感動したんですよね。
この日見たレミゼの舞台とリュバーブのデニッシュ、感動の大きさが同じくらいか、デニッシュの方が大きいでした。美味しいパン屋さんってすごいんですねえ…!!

 

という訳で、

たくさんの楽しい思い出をありがとう。また観劇する日を楽しみにしてます、帝国劇場!!

ミュージカル「ライオン」マックス回&成河回感想まとめ

<マックス回:2024/12/20(金) 15:30時公演 1階F列30番台前半 品川プリンスホテル クラブex

まずはマックスさん回の感想。

ギターと人間の歌声だけのミュージカルで、すごく上質で優しい舞台…になりそうなのに、主人公の人間性に共感も同情もできなくてなんとも言えない惜しさだったよ!!

精神年齢14歳のまま30歳まで走り続けてる傲慢で身勝手でイキってる主人公に正直観劇時間の大半見ていて苦痛を感じたよ!!
最初に散りばめてた伏線が最後に綺麗に回収される構成と、最後に少しだけ主人公が成長してくれた点はよかった…。

 

そんな感じで初回観劇ではあまりテンションが上がらなかったのですが、演者や言語によって印象が変わる予感があり、次に成河さんで見るのをすごく楽しみにしてました。

1階前方のサイド席は舞台に対して椅子がまっすぐ並べられていて、舞台を見るために頑張って身体と首を捻って観劇しなければならなかった為、全身が凝って疲れてしまったのもあまり楽しめなかった一因かもしれません。

 

 
<成河回:2024/12/23(月) 15:30時公演 2階バルコニー指定席 品川プリンスホテル クラブex

 

そして2回目、成河さん回。

一曲目の一音目の一声目を聞いた瞬間、もう心の中で「あ〜〜〜」って呻きながら頭抱えました。
良すぎて。

それ!!その声!!その柔らかさ!!優しさ!!!
私がこの曲に求める見たかったもの!!!!

もうこれは素晴らしい舞台ですねわかりましたありがとうございます、って成河さんの最初の一息でなりました。

濃密で上質で笑えて泣ける、最高オブ最高の舞台でした。ありがとう絶対に裏切らない成河さん。

曲の良さも歌詞の良さもめっちゃ沁みました。これだよ、こういうのが見たかったんだよ一人でギター弾き語りする自叙伝ミュージカルでは。優しい声と優しい音色と優しく暖かい空気。

 

こんなの国宝級演目でしょ!!?えっ今日が千秋楽なんですか!!?1回しか見られないのヤダーーー!!!という感情で終演後爆発しそうになったので、ライオンは今後再演を続けてほしいし成河さんは気力体力が続く限りベンを演じ続けて欲しい。

マックスさん回と感想が違いすぎるんですが、マックスさんの演技が物足りないというよりは、成河さんの演技が濃くて分かりやすくて楽しすぎるのではないかしら。たぶんマックスさんが下手なのではなく成河さんがうますぎる。ギターも歌も演技もできる成河さんの特に演技がやはりうますぎたから仕方ない。

 

1人舞台でこれだけ声色も姿勢も変えてさまざまな人物を演じ分けして楽しませられる役者さん、日本にどれだけいるのでしょうか。しかも自分で歌ってギターも弾きながら。

成河さん、あまりにも演技力がありすぎて、めちゃくちゃな演技力に加えて歌とかギターとか演技力以外の能力まで試されたり求められたりする演目に自分から突っ込んで行ってるのかな?しらんけど。
普通の演目じゃ物足りなくて、あえてこういう役者に無茶なものを求められる演目に嬉々として取り組んでるのかな?しらんけど。

75分間舞台上で成河さんの歌と演技だけをノンストップで見続けられるなんてそんな贅沢な演目があっていいの!!?あるの!!?あります!!!叶います!!!そう、「ライオン」ならね!!!

そんな感じ。

 

この感想だけ比べると、来日版は見なくても良かったかな、成河さん回だけで良かったかな?と思いそうなんですが、

私は作中の「ライオンをライオンたらしめるものは?」の問いかけの答えが、日本語版を見ただけではきちんと掴めなかったと思うので、英語版も見てよかったです!

 

(以下ネタバレ)

ライオンをライオンたらしめるものは「プライド」

「pride」には、「誇り」以外に「(ライオンの)群れ」という意味もあるって知らなかったよ!

 

ライオンは毎回アフタートークショーがあったそうなんですが(前回観劇時は保育園のお迎えのため聞かずに退出)、千秋楽の今回はスペシャルカーテンコールとのことで、成河さんが少し製作に関するトークをした後、オーディションで歌ったという作中の一曲を英語で歌ってくれました。

片付けがあるから時間がない、なのにスペシャルカーテンコールありって書いちゃった!どうしよ!!と焦って、焦っているのに製作裏話を喋り始めると止まらなくてさらに焦る成河さん、見ていてホッコリした笑。英語曲は途中で一回歌詞飛んでたし笑笑。

このゆるゆる感すらほんと楽しかったです。観客への語りかけ方と緩急の付け方がとてもうまくて、舞台でもトークでもたくさん笑わせてもらって元気出ました!!

 

英語版はとてもわかりやすい英語で、聞けるとこだけ聞いて字幕見てる限り良い内容の歌詞だな〜と思ったんですけど、日本語版、訳詞もすごく良かったです。韻も頑張って踏んでる箇所がとても多くて。

てか成河さん訳詞にも噛んでるis何事。多才すぎる。

 

久々にミュージカルで成河さんを見られて良かったな…ミュージカルに出てくれてありがとう成河さん。スリルミーは良作だけどお話がキツくてもう見るのしんどいから、ライオン見られて嬉しかった!

いやライオンも別にそんなハッピーミュージカルではないんですけど、スリルよりは優しいし救いがあって、スリルに比べれば見やすいし今後もリピートしやすいと思える演目でした。

次に成河さんを見られるのは、2025年のイリュージョニストの予定。楽しみ!!

 

今回初来訪した、品川プリンスホテル内の「クラブex」について少し。

この劇場に行くのは初めてでしたが、面白い会場でした!音響は悪くなかったし、一階土間席にはきっちり段差を設営して後方席の観客の視界を確保してくださっていました。運営さん有能、ありがとう。(後で聞いた話、これ成河さんの視界チェックが入っていたらしいです。流石すぎる。)

 

そしてこの劇場の2階はヨーロッパのオペラハウスのようなBOX席になっており、せっかくだから個室に座ってみたくて、成河さん回は2階席を選んでみました。

2階サイドのBOX席は1列のみ、椅子が6脚並べられていました。

 

反対側の様子。中央の個室はより狭く、前列に並べられている椅子は2〜3脚でした。

2階席、隣の席とは間隔が空いてるし後ろには誰もいないし、広々とゆったり過ごせて視界もよく、とても良かったです!!
手すりが高くて、舞台は手すりの下から覗く形でした。

舞台との距離は近かったけどぎゅうぎゅう詰め状態だった1階に比べ、役者さんとの距離はあっても2階の方がずっと快適に観劇できました。この劇場で何か見るなら次回も2階がいいな〜。照明も綺麗に見えて楽しめました。

 

2024年の観劇はライオン×2で終了となりました。

2025年もたくさん観劇したいです!

劇団四季「ゴースト&レディ」2回目感想 〜国産ミュージカル最高峰演目誕生〜

<2024/11/3(日) 13:00時公演 S席1階18列10番台前半 JR東日本四季劇場秋

 

フォロワーさんがチケットを譲ってくれ、東京楽の前週に奇跡的に2回目を見に行けました。

本当に行って良かった・・・。

5月に見た時と舞台の密度が全然違い、めちゃくちゃ良くなっていました。
役者もそして客席も、熱気と情熱が段違いで素晴らしい舞台に大進化していました!!!

楽曲と演出は海外の一級作品と遜色ないと前回思ったけど、今回役者の演技力と歌唱力と観客含めた劇場全体の熱気も含めて海外の超一級作品の千秋楽間近の公演と遜色ないレベルだと感じました。
日本で日本の作品でこんな観劇体験が出来る日が来るなんて感動!!ありがとう劇団四季!!!

  • 谷原フロー

前回見た時はいまいちキャラが掴めず茫漠とした印象だった、歌は上手いけど歌うだけの人に見えた谷原フローがまずめちゃくちゃ輪郭が見えるキャラになっていて、それが脚本条件求められるフローのキャラと一致していて舞台がすごく見やすくわかりやすくなってた!!ありがとうありがとう!!!

谷原フロー、意志激太のメンタル激強お姉さんでそれでいてコミカルで可愛らしいところもありそして目力が強い!目力が強い!!!常人とは違う!!!圧倒的英雄感!!!ちょ…超人だーーー!!!!

クリミアへ行こうの場面で皆を率いるセンターが似合いすぎてマジでアンジョルラス。

色恋に興味ないというか、色恋に理解はあるしその道でもある程度幸せになれることわかっていて、その上で色恋よりも圧倒的に使命優先、なぜなら使命は生きる意味だから的な目覚めちゃってる人感すごく伝わった。良。とても良。

 

フローがクリミアでしている苦労が、初回も今回もイマイチ苦労に見えないというか伝わらなかった。なんでだろう?役者さんが超人に見えるからかな?苦労演技が物足りないのかな。
苦労にもっと共感できれば、より尊敬できるんだけどな。

それでも前回見た時よりは「クリミアの天使」の言葉が浮いてなかった。舞台上のフロー像と彼女を讃える言葉が前回よりは近づいて見えた!

天使というよりは聖女に見えたな。グレイを失って絶望した時や別れる時の愛しそうな瞳に人間を感じたので、天使ではないなあ。恋愛より使命に邁進した超人ではあるので聖女かな。

もう少し、親しみやすい失敗とか抜け感というか、欠点や弱みが見えれば人間味を感じられてより好きなキャラになりそう。

 

あと最初に「絶望したから殺して」とグレイに言うシーンも、初回も今回もしっくりこなかったので、ここの演技をなんとか…してほしいなあ!難しいんだろうけど!!
どうしても本気で絶望してるように見えないから、演技と台詞がチグハグ。

フローが本当に絶望して、心から私を殺してと叫んだのはグレイを失った時だと後になればわかるし納得できるんだけど、観客はそういう二段構えの構造になっているから初回の絶望は弱めになってるとかわからないから、ただただ演技の説得力不足にしか見えないんだよな。そこだけ残念だったかも。

谷原フロー、舞台上で弱ってるシーンが何度もあるんだけど、あまり弱そうに見えず、ひたすら激強に見えたな…。物理的にか弱い女性で、実際弱いところもある、そんな人が使命感と意志の力で立ち上がり続けて超人になった、というのが私が見たいフロー像と物語なので、やっぱりちょっとじぶんが見たいと思うものとはズレがあるかも。

しかしそれを差し引いても、主演2人の熱演が後半どんどん加速していき、特に谷原フローのジョンホールとの対決場面の爆発歌唱は、「私はこういうのを生で見るために観劇しているんだ」と思う人間の生命と力強さの至高の輝きで大感動しました。光り輝く爆発だった。すごい体験だった。生で浴びれて本当に良かった。

 

  • 瀧山軍医長官

見れて嬉しい!!めちゃくちゃ好き〜!!!
ジーニー以外で瀧山さん見たの初めてだけど、歌は当然上手いんだけど何より芝居の呼吸がめちゃくちゃうまい。一人だけストプレの世界にいるかのような滑らかな呼吸と動き。芸達者すぎる。

悪役のはずなのに見ていて腹が立たず憎まれもしないだろう絶妙な軽妙さの芝居、素晴らしかったし個人的に大好き。こういう方が悪役をやってくれると見ていてストレスが本当にない。

 

  • 全員歌が上手い

四季の役者さん、みんな歌がうまい〜〜〜!!!
昔よりレベル上がってませんか?昔は舞台で時々「この人はちょっと歌が弱いな」と思う人がいたのに、ゴスレマジで歌は全員安定感がある。5月よりさらに上手くなった気がする。

特にラッセルの内田さん、声大きい〜〜朗々響き渡る美声〜〜好き〜〜!!

ボブは出番少ないけど、舞台上でめっちゃ良い仕事してるなあ〜!!
「お前、あの方を守っているのか」という台詞、グレイがどういう幽霊かという理解があったから、ラストシーンで何も言わずにフローをグレイと行かせられたんだな〜と2回目で気づきました。

 

  • 全体の感想

ゴスレ、2回目は初見より物語がよく見えました。

初回では人間が無理やり少年漫画のキャラを演じてるせいで口調がチグハグに見えたグレイも、今回は口調がしっくり馴染んでいた。役者さんの違いか、どちらの方も役に慣れてセリフが口に馴染んだのか。とにかく違和感がなくてとても良くなってた!!

初見ではコテコテの展開と設定にムズムズ笑いが止まらなかった霊気の口移しシーンで今回は号泣しちゃったよなんでかな????
だってなんかもう純愛なんだよ!!!グレイがフローを好きなんだよ!!!!笑うとこじゃないよ!!!

口付けした後、グレイが背を向けた時、ベッドから起き上がるフローが唇に一瞬手を当ててたんだよあれフローもグレイを好きだったよ2人は好き同士で両想いの恋人同士だったよツンデレとかそんな言葉でからかって良い対象じゃないんだよ!!!(自分にキレ)

フローは最初グレイに恋愛感情なく、人類愛的には最初から好きで、二幕途中から恋愛的に好きになる、
グレイは一幕序盤の段階でもうフローのことが恋愛的に好きでそれを自覚してもいる、
というバランスがわかりやすいし可愛いし楽しいと個人的に思いました。(原作はどうなんだろう)

 

  • 結末について

ゴスレ、初見時ノー知識で見た時はハッピーエンドだと思っていたんですけど、今回見たらこれ…トゥルーエンドの大団円エンドではあるけど、ハッピーエンド…じゃないですよね!!?ハッピーの定義にもよるけど、ビタースイートエンド…ですよね!?

ラストシーンで金本グレイは顔を歪めて、泣いてたように見えました。客席に向かってお辞儀をしながら泣いてたように見えました・・・そんな姿にこちらも号泣。

ねえグレフロって今後二度と会えないの???そういう設定なんですか!!?

 ・「また会えますよね?私たち」というフローの問いに、グレイははいともいいえとも回答しない(会えるなら「ああ、また会えるさ」とか言いそう)
 ・フローが去る時、「私、待っていますね、いつまでも」と「いつまでも」を若干強調して喋っている

ヤダーーーーーーー!!!!

なんで会えないんですか!?あっグレイはゴーストだから何もしないとそのまま現世に存在し続けるのか!?消滅するには人間を殺すか、幽霊に剣で心臓を刺されるしかないの!?ハードル高いな!!?えらい坊さんのご祈祷とかで成仏できたりしないの!!?だ…誰かーーーー!!!

と思ったけどそういえば以前どこかで
「グレイは生前決闘士として人をたくさん殺しているから、フローと同じ天国には行けない」
という文を見かけたような…気が…

えっグレイって地獄行き確定なの…?えっ………
ヤダーーーーーーーーー!!!!!!!

初回観劇時は、グレイがついていかないことに驚いたけど、「そうか「芝居を作りたい」って劇中で言ってたから、それをやり遂げるために残るのか、お互いのやりたいことを尊重して別れるカップル良いな現代的だな!」と思ったんですよ…グレイは芝居を作り終えたら成仏してフローを追いかけるんだと思ってた。
でも今回のラストを思い返してみると、ラストシーンで芝居を作り終え観客に見せたグレイは感無量の表情で泣いてて、お辞儀して、その後光る階段を登って行った…あの演出は…?

フローに会いに行ったなら、ランプを掲げたフローがグレイの後ろから出てきて見守っているのもおかしい…2人が再会するならグレイはフローの方に向かって行く演出になるのでは…執着していた芝居や劇場からは解放されて自由になって、魂も一段階自由になったけど、昇天はできていない…とかなのかなあ。観客の想像と解釈に委ねられているのだろうか…

という訳で原作での結末を確認すべく、「ゴーストアンドレディ」を含め、黒博物館シリーズを全巻買いました。

読むのが楽しみ〜!!

 

  • ゴスレという作品に対して思うこと

ゴスレとエリザは「史実では配偶者との愛に恵まれなかった(ように見える)女性に人生の伴侶となる存在と理解と愛を与える」という点が共通していて、それによって史実の人物の不幸(と思われるかもしれない)点を解消しすることによって観客に満足と幸福感を与えようとしている点が共通しているんですけど、これ、日本史で該当する作品を作れそうな有名な女性っているかなあ?
というのも、ゴスレは素晴らしい作品だし輸出もして欲しいんですけど、結局PRしてるのはイギリスとイギリス人なので、「和製傑作ミュージカルです!ただし舞台はイギリスで登場人物もイギリス人です!!」というのは少し残念というか、もったいない気がして。
エリザやM!など、明確に自国の観光資源になるようにと意識して作られた傑作と、そこに差があると思いました。「制作国・本国でその作品を見ることの臨場感・感動」が、他国を舞台にしてしまうとなくなってしまう。ゴスレを現地で見て一番感動する場所は日本の竹芝じゃなくてイギリスのドルリーレーン劇場だろうから…ドルリーレーン劇場でゴスレが上演されたら感動何倍にもますでしょ絶対。

イギリスでゴスレが上演されたら見に行きたいな!(気が早い)

 

ミュージカル「ニュージーズ」感想

 

2024/10/12(土) 13時00分公演 B席2階I列30番台センターブロック 日生劇場

 

初演の時はチケットが激戦で全然取れず、周りに見た人もいなかったのでどんな演目なのかあまり知らないままだったニュージーズ。

音楽がアラン・メンケンなので1回は見ておきたく、今回の再演でようやく行けました!

 

実際に見てみると、

アランメンケン(音楽)2 : 小池修一郎(演出)8
くらいの割合の印象の強さでした。小池味が強い…ッ!!!

 

そして「ニュージーズ」を見ているはずなのに「1789」を見にきたっけ?と何度も勘違いするくらい「1789」を見ている気分になりました。演出家が同じだとこうも印象がかぶるものなのか。

あまりにもあまりにも1789すぎて確認したところ、ニュージーズの原作は1992年のミュージカルで1789関係なかったんですが、主役とヒロインのキャラクターがロナンとオランプまんまな上にロナンとオランプまんまな流れでキスをしたりジャックが自由と革命を叫んだり印刷機で新聞を印刷したりと、物語の筋も主張もやってることも全部同じなので頭がこんがらがる。

悪く言うと二番煎じ感が強くて、「1789」の印象が強すぎるので「ニュージーズ」のキャラや物語が霞んで見えてしまいました・・・。日本版に限定すると、1789を未見で見た方が楽しめた気がする。

 

決して悪くはないのですが、あまり印象に残らない演目でした。音楽も決して悪くない、むしうろ良いとは思うのですが一発で頭に残る旋律がなく。
何より物語のパンチが弱い。地味というか薄い。内容がないわけじゃないんですが、かけてる時間の割に話が進まなくて特に一幕はやや退屈でした。二幕は話が好転していき楽しかったのですが。

そういうやや退屈な筋を役者の魅力で退屈させずにいられれば良いんですが、釘付けになるオーラを感じる人もおらず…。

演技部分の間が冗長で退屈なんですよね。演技部分カットして歌と音楽と踊りだけで構成すれば良いのになあ。


若い男の子達が集団でひたすら踊る場面は見ていて楽しかったので、個人的には唯一そこが楽しめるポイントでした。

最初は若者達の歌と演技に歯痒さを感じていたけど、ダンスシーンはとても良いし、彼ら皆基本的にダンサー採用なんだろうなと思うと、一生懸命さはビシビシ伝わってくるし最後には好感持って応援する気持ちになりました。(ロミジュリと同じパターン)

 

小池修一郎とアランメンケンがタッグの歴史劇なら帝劇でやってもいいくらいのではと最初は思いましたが、なるほどこれは物語が日生の規模感でした。

題材は悪くないと思うんだけど。脚本がもう一歩なのかなあ。

ニュージーズ、演目的には悪くないと思うのですが、どうしても1789と比べてしまうし、1789の方が音楽がよりキャッチーでキャラクターも個性的でバラエティに飛んでいて何より物語に苦味と深みがあって面白いので、1789を見ればいいか…って思ってしまう…。
ニュージーズ、やはりディズニーというかアメリカが作ったミュージカルという感じがします。完全無欠のハッピーエンド的な。

ただこういう、苦味がない演目も世の中にあった方が良いと思うし、こちらの方が好きな人もきっといるだろうから、どっちも世の中に末長く残り愛されてくれ!と思います。
作り手が苦心惨憺して作ってくれたであろう全ての演目にすべからく感謝の気持ち!!

 

それにしてもB席5千円で2階席で生オケで見られる演目、もうほぼなくなってきちゃったなあ。(今回はそれもチケット購入の決め手でした。近年の演目の中ではこれはありがたいなと)

アランメンケンの他作品よりは自分には響きませんでしたが、上質な音楽を好きな劇場で堪能できて嬉しかったです!

 

↓ブロードウェイ版

アラン・メンケンの作品の中で最愛のラプンツェル

日米合作ミュージカル「RENT」感想

2024/9/7(土) 12時30分公演 S席1階12列10番台センターブロック 東急シアターオーブ

 

RENTは人類の宝ですね。
ありがとうジョナサン・ラーソン。

 

という訳で、日米合作版「RENT」行ってきました!!

RENTを見るのは10年以上ぶりくらいだったんですが、名曲に次ぐ名曲で名曲ばかりでビックリしました…。
曲も歌詞も素晴らしく良い。神作か?神作だった。

そして英語で見れて嬉しかった!!ブロードウェイオリジナルキャスト版が親で何千回聴いたかわからないくらい聴いているので、英語歌詞のメロディが耳に馴染む…舞台からあのメロディあの歌詞が聞こえてくる喜びに身震い。他の演目ももっと原語で見たい〜!!来日公演を見たい欲を掻き立てられました。

 

クリスタルケイのモーリーンは期待以上に素晴らしかった!

マークとモーリーンのタンゴモーリーンがめちゃくちゃ良くて、「この二人がこんなに惚れ込むモーリーンってどんな良い女なの!?」と観客に思わせたところで、期待を裏切らない女が出てきた!!!

クリスタルケイモーリーン、バイクに乗って後光を背負って登場する瞬間から只者でない存在感で、バイクから降りてヘルメットを取ったら顔カッコよし腹筋バキバキスタイル超よし歌うましパフォーマンスキレッキレ!!いい女だ!!これは惚れる!!!納得!!!物語におけるキャラの立ち位置も役割も解釈も演じ方も完璧で文句のつけようのない素晴らしさ!!ありがとうありがとう!!

 

そして山本耕史のマーク!!今回これを見るためにチケットを取った山本耕史マーク!!

日本キャスト版CDを聴いて以来見たくて見たくて、でも見られるとは思ってなかった山本耕史マーク!!!

期待通り、いや期待以上に良くて、理想のマークすぎて震えた。初演のアンソニーラップのマークは来日版で一度だけ見てるんですけどもうあまり記憶になくて、今私の記憶にある中では間違いなく今山本耕史が一番完璧なマークというか、もう動きも表情も声も一瞬一瞬のすべてがマークを体現していて何を語ればいいのかわからない。ただの本人になってる。

山本耕史の声、ブロードウェイオリジナルキャストのアンソニー・ラップに似ていて、そりゃ本人もかなり聴き込んだんだろうし歌い方も似ている気がして、舞台見ながら「口からCD音源!!?」という錯覚を何度かしてしまった。

そして顔カッコ良いし歌上手いし服の上からもわかるマッスルに俊敏な動き、細かい演技に指先までコントロールしたパフォーマンス。すごい。

比較的近めの席だったので基本肉眼で舞台全体を見ていたんですが、表情もちゃんと見てみたくてタンゴモーリーンの場面でオペラグラスで覗いてみたら、一瞬一瞬細かい上に丁寧で大胆で分かりやすい表情を音楽に乗せてくるくる変える演技をしていて驚愕しました。表情なんて遠くの観客には伝わらないところでまでそんな細かく完璧な演技を・・・しかも音楽に乗せて身体も動かしながら表情も連動させて・・・山本耕史・・・!!!!

ラヴィボエームもファットユーオウンも心の中でショーストップ!!曲自体が良いんだけどそれを表現する山本耕史の歌とパフォーマンス!!!座長ーーー!!!!

山本耕史、ラヴィボエームで机の上に乗り上がったり寝転んだりめちゃくちゃ動くんですけど、全部の動きが柔らかく音もなくシームレスで素晴らしいパフォーマンス。一瞬でも目を離したらもう違うことしてるから目で追ってついていくのにこちらも必死になる。円熟の演技力と20代顔負けの鍛え抜いた筋肉による動き。すごすぎ。

「俺はこのクオリティのものを観客に見せる、絶対にだ」という揺るぎない意志と気迫で素晴らしいパフォーマンスを毎秒毎秒繰り出しているのが伝わってきました。舞台の上で一瞬たりとも気を抜いていなかった。

ミュージカルにおいて、日本人役者は歌唱力で海外キャストにどうしてもパワーでは届かないと思うことがあるのですが、そんな偏見を吹き飛ばす山本耕史マーク。鍛え上げた肉体でのキレッキレのパフォーマンスにブレのない歌唱、そして日本人役者の良さ「演技の丁寧さ」を最大限発揮して、今回の日米合作版RENTで間違いなく一番の存在感と完成度とエネルギーで主役として君臨していました。間違いなく世界トップレベルのマーク。世界の山本耕史

今回の日米合作RENTは主に山本耕史のために作られたような舞台だろうと思っていたのですが(若手日本人キャストの中に山本耕史が混じると年齢的に浮いてしまうけれど、海外キャストの中に混じれば比較的浮かないので)(それが実際そうなっていてとても良かった)、素晴らしいものを見せていただきました。見られて本当に良かった。

企画制作してくださった皆様、そして演じてくださった役者の方々、本当に本当にありがとうございます!!!

 

RENTは5年に1回くらい見て気持ちを新たにするのが良いですね。

no day but todayの心、近年忘れていた。毎秒毎秒気合い入れて生きねば!!と思いました。

RENT、メロディも良いけど歌詞も良すぎじゃ無いですか?字幕読んでて泣きまくる名歌詞なんですが何食べたらあんな詩書けるの?クンツェさんの歌詞にはずっとそう思ってましたがRENTも良すぎる。亡くなってしまったから余計そう見えるのだけど、当時のジョナサンラーソンの実感と魂の叫びがこもった、血で書かれたような歌詞に見えて涙が出ちゃう。what you ownの歌詞とか。世紀末のアメリカで死に行く俺たち…!!

20代で見た時と今見た時では抱く感情も違ってて、違う感情を呼び起こされる。自分が子を産んで親の立場になったのも大きい。RENTのキャラクターたちはなんでみんなあんなに行き詰まっても親に連絡取らないの?親はあんなに何度も電話してるのに…日米の文化差?わからない…。

感情移入はしなくなってるけど、物語を俯瞰して見られるようになったおかげでより感動できるようになったこともあるのか、コリンとエンジェル、ロジャーとミミの愛が今回はどちらもスッと入ってきて泣けました。特にコリンとエンジェル、ほんとに純愛。

 

毎回RENTの終演後はほろ苦くて、ラストにミミが生き返っても「どうせすぐに死んじゃうんだろう、その場しのぎで甦ってぬか喜びしたって…悲しみと苦しみと不幸を少しばかり先送りしただけ…」と思ってたんですけど、今回は「いや、この後たとえどれだけ生きられるかわからなくても、ロジャーとミミは想いを伝え合ってわかり合ったのだから、これからの日々はとても幸せで貴重なものになるはず…その日々を過ごさずに亡くなってしまうよりずっと良かったんだ…良かったなあ…!!幸せに生きろよ!!」と思えたし、なんならエンジェルが起こした奇跡でこの後全員老年まで元気に生きて幸せに暮らしましたみたいな未来もちょっと見えたんです!!!!泣
RENTってもしかして…ハッピーエンドだった…!!?そうか私がハッピーエンドだと思えばハッピーエンドで、この後にそんな未来が来るかもしれないのか!!!物語は自由!!!とまたひとつ目から鱗が落ちる体験をしました。ありがとう日米合作版RENT。

 

私が見た回はロジャーがアンダーの人で、歌も演技もしっくり来なくてマークと対等感が無かったので、全員ファーストキャストの日に1回見たかったな〜という気持ちがちょっと起きました。

でも今回は私をミュージカルにはめてくれた留学時代の友人達とはじめて一緒にRENTを見られて、幕間や終演後にこの舞台の初見の感想を友人達と分かち合い、すごく楽しく語り合えたので、1回しか見られなかったけど、それもまた良しでした!!

 

次に言語で見る予定のミュージカル(SIX)は2枚くらいチケット取ろうと心に決めた私でした。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

 

ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」2024年版感想

2024/5/31(金) 13時00分公演 S席1階13列40番台センター席 新国立劇場中劇場>

 

2024年!!今年もロミジュリが開幕!!

演出家やその周辺に対して思うところがあり今回はチケット取るのをやめようかと思っていたのですが、結局見に行きました。

ちょうどこの時期東京に遊びに来る予定があった母が「一緒に何か観劇したい」と言ってくれ…母と2人で観劇する機会も一生でもうあと10回もないかもしれないことを考え、上映中の演目の中から一番良演目だと思えるものを選んだらロミジュリになったのです。曲の良さはやはり抜群で毎回必ず感動するし、大抵の人はあらすじを知っているのでとっつきやすいと思って。(そして予想通り、母は「ロミオとジュリエット、昔映画で見たことあるよ!」と喜んでくれたので良かった)

 

ロミジュリはやっぱり曲が良く、場面構成も良く、キャラクターも物語も良い、出来の良い良作ミュージカルですね。今回も観劇中幸せでした!!

今回は母も一緒なので久々のS席、しかも1階真ん中あたりのどセンター席を取れたので、アンサンブルの動きが美しくて美しくて、ヴェローナの最初から感極まって泣いてました…。センターから見られる視界でしか得られない美しさと感動、ある。

やっぱりロミジュリのダンサーさん達のダンスとフォーメーションが好きだ。演出と振り付けが上手いなあと思う。

世界の王はいつでも多幸感がすごい。モンタギュートリオと若者達の若さのきらめきがすごい。「時間よ止まれ!!」と全力で祈りながら舞台を凝視してた。

今期もダンサーさん達の力強さと若さがすごかった。ダンサーさんが出てくるダンスナンバーの生命力と躍動感のパワーが絶大。
ヴェローナ、世界の王、仮面舞踏会、綺麗は汚い、どれも最高に楽しい!!

若者達、見た目元気なヤンキーで現実にいたら近寄りにくいタイプなんですが、舞台上だと「あ〜〜若者達が頑張ってる〜〜元気で楽しそうでいいねいいねー!!」と完全におばちゃん目線で見守っておりました。

 

各キャストの印象は、実は今回はそんなになくて。

ロミオは、イケメン〜〜〜!!イッッッケメンンンンンンンンン!!!

登場が通路を使う演出だったのでかなり近くで見られたのですが、あまりのイケメンさに驚いたらしい母が、思わず私の肩をつつきながら「カッ、カッコいいねええ〜〜〜…!!」と小声で話しかけてきました。うん、岡宮ロミオカッコよかった。そして歌も上手くて声量も十分、演技も自然で申し分なかった!!

 

そう、ロミオ単体で見るととても良かったと思うのですが、ジュリエットが…声は可愛いんだけど、めちゃくちゃ幼くて…!!

吉柳ジュリエット、今まで見てきたジュリエットの中で一番幼かったかもしれない。
確かにこれは16歳、下手したら13〜14歳(精神年齢)に見える…可愛いけど危うい、めちゃめちゃ子供!!き、君はまだ親の庇護下にいろ…!?って思ってしまいました。

君は大人のパリスに庇護してもらいながら生活するのがいいんでない!!?と思ったジュリエットは初めてでした…そんな恋に恋する夢見る夢子で結婚なんて無理でしょ!?自立して自分の家庭をもって生活していける!!?精神の成熟度がせいぜい普通の女子高生、というかもう女子中学生レベルですやん!!?無理せず親にお世話してもらいな!!?と本気で心配。

ジュリエットが見た目も精神も幼すぎて、ロミオに対して「そんな子供をたぶらかして家から出しちゃダメだよ!!」と思ってしまいました。ロミオがロリコンに見えた…。

一幕ラストの結婚式が、まさに現代に16歳と20歳で勢いで結婚してしまう若者同士に見えて。ジュリエットがめちゃくちゃ幼い子供なのにそれを支えられるほどロミオも大人ではなく、年齢相応のただの若者なので、もう「そりゃこの後の結婚生活失敗するよね」と破滅が目に見えてる予想できる二人で…見ていて少し辛かった…。

ジュリエットはもう少し精神的に成熟を感じられる、親元からの巣立ちを望むことに無理がなく見えるタイプの方が個人的には好みでした。

 

そしてパリス…ごめんなさい、今回も登場場面で岡田パリスの幻を見てしまいました。「シャッキンガーー!!」のシャウトがないのが物足りない、恋しい。

日本版ロミジュリ、何回見てもいつまで経っても岡田パリスの幻影を見てしまうからこの幻はもう死ぬまで見るかもしれない。

いつの間にか浦井ベンボの幻影は見なくなったのに。自分の中で最後まで残る初演の幻影が岡田パリスだとは…岡田パリス、好きだよ…。

 

今回、ロミオが死んだのはティボルトを殺した割と順当な報いに見え、そしてジュリエットが死んだのも、我儘な子供の暴走の末の自業自得に若干見え、あまり泣けず…。

ロミジュリの死は、すごく泣ける時もやや冷めた目で見てしまう時もあるのですが、母親達の嘆きは毎回泣きます。

終盤、神父のソロの終わりまでは皆絶望的な雰囲気で、「死」がヴェローナを支配して、もう何もかも終わった…絶望…という空気にいったんなるのに、そこから母親達の歌に始まりどんどん挽回していく展開が熱いんですよね。

「息子は帰らない、どんなに嘆いても 

 神様は親達に 罰を与えた 

 私たちは罪人 地獄に生きる」
の歌詞がつーーーーんと沁みる。

大事な子供が死んでしまって絶望している親の心境として、子供の死を無駄にしたくないとか、せめて何かしたいと思って両家の和解のきっかけにしている風にも見える母達が泣ける。

「二人の願いは二つの家が手を取り合って許し合うこと」とか、別に本当に二人がそう願っていたとは思ってなくて、でもロミジュリの二人を無駄に死なせたことにしたくなくて、今ならそう言えば両家を説得して和解させられるからそう言ったように見えるんですよね、母達。
大事な子供を犬死にさせたなんて、親として辛すぎるから。

そしてこの動きをするのが母達、というのが構造的にも気持ち的にも理に適っている。
母達は、一幕、「ヴェローナ」の次に「憎しみ」で愚かな男達、女達の悲しみを考えて、と歌っているので、最後、憎み合い闘い続けようとした父達を止め、愛を説き、和解を促すよう動く伏線が出来てる。

そしてこういう風に感じてこう動くのはいつの時代も女だよなあと思う。個人的な偏見かもしれないけど。

 

実際ロミオとジュリエットは無駄に死んでしまっているのだけど、それをきっかけに両家が和解してるから、救いがありまとまりも良い物語になっているんですよね、ミュージカル版。

ロミジュリって、一幕冒頭で「憎み愛し合う時など来ないさ」という歌詞で問題提起がされる、つまり結末は「憎しみが終わり愛し合う時が来て終わる」物語だ、と最初から明示されている舞台なので、それを意識して見ると終盤の展開はとても順当というか、伏線を回収して話が綺麗にまとまっていく様が美しくて、見ていて気持ち良いです

 

ロミジュリには2005年にウィーンでハマって、もう20年近く見続けています。
エリザもだけど、こんなに長く絶え間なく上演され続けるコンテンツになるとは、当時思っていませんでした。
死ぬまで見続けられるかな?そうなったらいいなあ。
大好きな演目に伴奏してもらえる人生。幸せだ!!

 

 

劇団四季「ゴースト&レディ」1回目感想 〜こういう国産ミュージカルが見たかった〜

<2024/5/22(水) 13:30時公演 C席2階11列1桁番台前半 JR東日本四季劇場秋

 

原作未読、Wikipediaナイチンゲールのページを開演直前に一読だけした私が幕間に抱いた印象:

エリザベートオペラ座の怪人を足して2で割ってハッピーエンド(たぶん)にする話…!?」

 

終演後の印象:

あーーーーーニ幕良かっためちゃくちゃ良かった面白かったなるほどこれがやりたかったのね理解ありがとう劇団四季ありがとう国産ミュージカルでこれが見たかったものを作ってくれてありがとうありがとうありがとう最高!!!!!

 

…という感じで、強い魅力のある曲とキャラと場面がなく、全体的に頭に残る印象が薄かった一幕に比べ、二幕は非常に面白くのめり込んで観劇し、体感時間1分くらいで終わりました。総合的には非常に良かったです!!

 

天命と信じる仕事を頑張りまくるナイチンゲールに自分も仕事を頑張らなければと焦ったり、言葉遣いとツンデレなキャラクターに一昔前の漫画感があるグレイにこそばゆさを感じたりしながら、(キャスト表を見て出演されることは知っていたので)なかなか出てこないなー?と思っていた岡村美波さん。

一幕ラストに彼女のデオンが登場し、二幕からはその圧倒的歌唱力とピリッとした演技で一気に舞台が締まりました。やっぱり岡村さんすごい。

しかし私はゴースト&レディを見にきたはずなのに岡村美波さん(※劇団四季版エルサ初演キャスト)が雪山に出現するし私が見にきたのはアナ雪だった…?いや確かにゴースト&レディだ!!と思っていたら岡村美波さんが吹雪の中敵と戦うし隣でアナ雪やってるしやっぱり私が見たのはアナ雪だったかもしれない。ゴースト&レディです。

 

岡村美波さんの素晴らしさは突出していましたが、フローもグレイも二幕になったら急によく見えました。
とくにフロー、歌が上手い!!声が綺麗でブレない!!
そして二幕終盤、一幕序盤に出てきたサムシングフォーをグレイが出してきた時には心底びっくりしました。この回収は泣いた。物語の回収の仕方が天才だと思った。

アレックスと部下との結婚が絶望するほどショックだったフローに、過去アレックスから差し出されて拒んだサムシングフォーを、また与えてあげるなんて。人外と人間の、こんなに美しい結婚式、こんな美しいハッピーエンド恋愛物語見たことないよ!!!!フローの人生のすべてが、グレイのおかげで文字通り報われたように見えたよ!!!なんて女心のわかる、最高の男なんだグレイ!!トート閣下息してる????

 

以下、感想を箇条書き。

⚫︎グレイがフローに霊力を分け与える為にキスした場面

「あーーーーそれはベタですベタベタですやめてください恥ずかしいです直視できませんこそばゆいですでもいいです可愛いです可愛いなあもうあーーーー昔の漫画でよくある、あーーーー!!!!(赤面)」

…と、内心どったんばったんしておりました。

藤田先生の作品はうしおととらを全巻読んだだけなので、こんなコテコテの少女漫画みたいな漫画描かれるのね!!!?という驚き。もっと少年漫画な作風かと…いや少年漫画でもよくある展開なのかもしれないけど昔の漫画でよくあるやつ!!!恥ずかしい!!可愛い!!ニヤける!!可愛い!!!

 

⚫︎突然のヴィクトリア女王
ナイチンゲールWikipediaに名前出てたけどほんとに出てきたーーー!!!演出と名前によるインパクトがすごい!!

もうこのヴィクトリア女王を入れてる時点でゴースト&レディは成功!!
ハミルトンのジョージ3世、JCSのヘロデ王知名度のある偉い人を一曲短時間ユーモラスにドーンと出して観客に一息つかせつつ頭に強烈なインパクトを残す要素!!
よく入れた!!よく研究して作ってる!!!ありがとうありがとう!!

 

⚫︎タイトルについて

原作に敬意を表することは大前提として、舞台版はタイトルを「ランプの貴婦人ナイチンゲール 〜ゴースト&レディより〜」にする方が、私のような原作のことを全く知らない人間相手にもにタイトルだけで話の内容が伝わり、より興味を惹かれて良かったと思う。特に海外に輸出する時はそうしたらどうかなあ。(輸出できるクオリティの作品だと思うのでぜひ輸出してほしい)

 

⚫︎女性主人公の歴史大河ミュージカルとして国産初の成功例だと思う

エリザベート」のような、今まで日本が頑張って作ろうとして微妙にこけてきた(…)ヨーロッパの女性を主人公にした正統派豪華歴史ミュージカル、まさかナイチンゲールを主人公に劇団四季が出してきてくれるとは思わなかった!!よくこれを舞台化してくださいました!!

マリー・アントワネット」「レディ・ベス」あたりよりも物語と人間関係が明快でエンタメ性が高く、広く一般に受けるんじゃないかなと個人的に思います。

 

ナイチンゲールが主人公と知り、イギリスが好きな私は興味を抱いてチケット取りましたが、いや〜観に行って本当によかったです。楽しかった!!ありがとう劇団四季!!!

また観に行きたいな〜!!原作も読みたいです!!!