黄金羊の観劇記

観劇・映画・読書の感想を好き勝手に書いてます。東宝・宝塚・劇団四季中心、海外ミュージカル(墺英米)贔屓、歴史好き。

ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」2024年版感想

2024/5/31(金) 13時00分公演 S席1階13列40番台センター席 新国立劇場中劇場>

 

2024年!!今年もロミジュリが開幕!!

演出家やその周辺に対して思うところがあり今回はチケット取るのをやめようかと思っていたのですが、結局見に行きました。

ちょうどこの時期東京に遊びに来る予定があった母が「一緒に何か観劇したい」と言ってくれ…母と2人で観劇する機会も一生でもうあと10回もないかもしれないことを考え、上映中の演目の中から一番良演目だと思えるものを選んだらロミジュリになったのです。曲の良さはやはり抜群で毎回必ず感動するし、大抵の人はあらすじを知っているのでとっつきやすいと思って。(そして予想通り、母は「ロミオとジュリエット、昔映画で見たことあるよ!」と喜んでくれたので良かった)

 

ロミジュリはやっぱり曲が良く、場面構成も良く、キャラクターも物語も良い、出来の良い良作ミュージカルですね。今回も観劇中幸せでした!!

今回は母も一緒なので久々のS席、しかも1階真ん中あたりのどセンター席を取れたので、アンサンブルの動きが美しくて美しくて、ヴェローナの最初から感極まって泣いてました…。センターから見られる視界でしか得られない美しさと感動、ある。

やっぱりロミジュリのダンサーさん達のダンスとフォーメーションが好きだ。演出と振り付けが上手いなあと思う。

世界の王はいつでも多幸感がすごい。モンタギュートリオと若者達の若さのきらめきがすごい。「時間よ止まれ!!」と全力で祈りながら舞台を凝視してた。

今期もダンサーさん達の力強さと若さがすごかった。ダンサーさんが出てくるダンスナンバーの生命力と躍動感のパワーが絶大。
ヴェローナ、世界の王、仮面舞踏会、綺麗は汚い、どれも最高に楽しい!!

若者達、見た目元気なヤンキーで現実にいたら近寄りにくいタイプなんですが、舞台上だと「あ〜〜若者達が頑張ってる〜〜元気で楽しそうでいいねいいねー!!」と完全におばちゃん目線で見守っておりました。

 

各キャストの印象は、実は今回はそんなになくて。

ロミオは、イケメン〜〜〜!!イッッッケメンンンンンンンンン!!!

登場が通路を使う演出だったのでかなり近くで見られたのですが、あまりのイケメンさに驚いたらしい母が、思わず私の肩をつつきながら「カッ、カッコいいねええ〜〜〜…!!」と小声で話しかけてきました。うん、岡宮ロミオカッコよかった。そして歌も上手くて声量も十分、演技も自然で申し分なかった!!

 

そう、ロミオ単体で見るととても良かったと思うのですが、ジュリエットが…声は可愛いんだけど、めちゃくちゃ幼くて…!!

吉柳ジュリエット、今まで見てきたジュリエットの中で一番幼かったかもしれない。
確かにこれは16歳、下手したら13〜14歳(精神年齢)に見える…可愛いけど危うい、めちゃめちゃ子供!!き、君はまだ親の庇護下にいろ…!?って思ってしまいました。

君は大人のパリスに庇護してもらいながら生活するのがいいんでない!!?と思ったジュリエットは初めてでした…そんな恋に恋する夢見る夢子で結婚なんて無理でしょ!?自立して自分の家庭をもって生活していける!!?精神の成熟度がせいぜい普通の女子高生、というかもう女子中学生レベルですやん!!?無理せず親にお世話してもらいな!!?と本気で心配。

ジュリエットが見た目も精神も幼すぎて、ロミオに対して「そんな子供をたぶらかして家から出しちゃダメだよ!!」と思ってしまいました。ロミオがロリコンに見えた…。

一幕ラストの結婚式が、まさに現代に16歳と20歳で勢いで結婚してしまう若者同士に見えて。ジュリエットがめちゃくちゃ幼い子供なのにそれを支えられるほどロミオも大人ではなく、年齢相応のただの若者なので、もう「そりゃこの後の結婚生活失敗するよね」と破滅が目に見えてる予想できる二人で…見ていて少し辛かった…。

ジュリエットはもう少し精神的に成熟を感じられる、親元からの巣立ちを望むことに無理がなく見えるタイプの方が個人的には好みでした。

 

そしてパリス…ごめんなさい、今回も登場場面で岡田パリスの幻を見てしまいました。「シャッキンガーー!!」のシャウトがないのが物足りない、恋しい。

日本版ロミジュリ、何回見てもいつまで経っても岡田パリスの幻影を見てしまうからこの幻はもう死ぬまで見るかもしれない。

いつの間にか浦井ベンボの幻影は見なくなったのに。自分の中で最後まで残る初演の幻影が岡田パリスだとは…岡田パリス、好きだよ…。

 

今回、ロミオが死んだのはティボルトを殺した割と順当な報いに見え、そしてジュリエットが死んだのも、我儘な子供の暴走の末の自業自得に若干見え、あまり泣けず…。

ロミジュリの死は、すごく泣ける時もやや冷めた目で見てしまう時もあるのですが、母親達の嘆きは毎回泣きます。

終盤、神父のソロの終わりまでは皆絶望的な雰囲気で、「死」がヴェローナを支配して、もう何もかも終わった…絶望…という空気にいったんなるのに、そこから母親達の歌に始まりどんどん挽回していく展開が熱いんですよね。

「息子は帰らない、どんなに嘆いても 

 神様は親達に 罰を与えた 

 私たちは罪人 地獄に生きる」
の歌詞がつーーーーんと沁みる。

大事な子供が死んでしまって絶望している親の心境として、子供の死を無駄にしたくないとか、せめて何かしたいと思って両家の和解のきっかけにしている風にも見える母達が泣ける。

「二人の願いは二つの家が手を取り合って許し合うこと」とか、別に本当に二人がそう願っていたとは思ってなくて、でもロミジュリの二人を無駄に死なせたことにしたくなくて、今ならそう言えば両家を説得して和解させられるからそう言ったように見えるんですよね、母達。
大事な子供を犬死にさせたなんて、親として辛すぎるから。

そしてこの動きをするのが母達、というのが構造的にも気持ち的にも理に適っている。
母達は、一幕、「ヴェローナ」の次に「憎しみ」で愚かな男達、女達の悲しみを考えて、と歌っているので、最後、憎み合い闘い続けようとした父達を止め、愛を説き、和解を促すよう動く伏線が出来てる。

そしてこういう風に感じてこう動くのはいつの時代も女だよなあと思う。個人的な偏見かもしれないけど。

 

実際ロミオとジュリエットは無駄に死んでしまっているのだけど、それをきっかけに両家が和解してるから、救いがありまとまりも良い物語になっているんですよね、ミュージカル版。

ロミジュリって、一幕冒頭で「憎み愛し合う時など来ないさ」という歌詞で問題提起がされる、つまり結末は「憎しみが終わり愛し合う時が来て終わる」物語だ、と最初から明示されている舞台なので、それを意識して見ると終盤の展開はとても順当というか、伏線を回収して話が綺麗にまとまっていく様が美しくて、見ていて気持ち良いです

 

ロミジュリには2005年にウィーンでハマって、もう20年近く見続けています。
エリザもだけど、こんなに長く絶え間なく上演され続けるコンテンツになるとは、当時思っていませんでした。
死ぬまで見続けられるかな?そうなったらいいなあ。
大好きな演目に伴奏してもらえる人生。幸せだ!!