黄金羊の観劇記

観劇・映画・読書の感想を好き勝手に書いてます。東宝・宝塚・劇団四季中心、海外ミュージカル(墺英米)贔屓、歴史好き。

東宝版「レ・ミゼラブル」感想(2021年5月26日ソワレ・佐伊二屋竹加六樹相)〜開幕直後に今季ベストキャストに出会ってしまった可能性〜

f:id:nakamikana:20210527154604j:plain

<2021/5/26(水) 18時公演 A席1階T列30番台通路側席>

 

緊急事態宣言もあり当初はどうなることかと思ったのものの、とりあえず無事に開幕してくれた2021年レ・ミゼラブル。おめでとうおめでとうありがとう…!!

最初はプレビュー2日目(22日土曜日ソワレ)のほぼ同キャストの日を狙っていたのですがチケットが取れず、この日なら取れたのですが、ギリギリまでキャストが発表されなかった日だったから残っていたのだと思います。ラッキーでした…!(東宝ナビザーブの先着先行初日、発売開始から数時間経過後にやっと繋がり、他の回が軒並み端席近くしか残っていない中、この回は1階A席センターブロックを購入出来てとても嬉しかった思い出)

普段ならキャストの演技に熱が入ってくる後半に見るのが好きなのですが、見たいキャストの組み合わせ回が開幕直後しかなかったので、私にしては珍しい早めの観劇になりました。

結果、この回の舞台、めちゃくちゃ良かったです。今年のベスト演目・ベストキャストになるかもしれません。行って良かった…!!

 

佐藤バルジャン!!!

伸び代しかない!!!素晴らしい!!!
前季より格段に良くなってる!!正直前季は歌うのに精一杯でその歌もギリギリ、演技は追いついてなかった(正直あまり出来ていなかった)印象だったのが格段に進化していました!!!

佐藤さんがキャスティングされた時に期待したバルジャンをようやく見られました!!!
この歌声、美声!!!声量!!音程の安定感!!
そして何より若さ!!等身大の人間感!!聖人でも悪人でも巨人でもないバルジャン!!私たちと同じ大地に立っている、同じ背丈の人間感!!

ちゃんと演技してるんだけど、しかも細かく熱の入った良い演技してるんだけど、わざとらしくない!!良い意味で自然体というか、素の人間らしく見える!!舞台の上の作られた聖人バルジャンじゃないんです!!改心前の悪心も悩みも迷いも全部リアルで感情移入と共感しやすい!!良い意味で舞台の上の19世紀の人じゃなくて、同世代同時代の人間に見える!!

市長になって以降の性格は、基本的に優しい。ひたすら優しい。ヤン・ジュンモさんのバルジャンと同系統に感じました。

佐藤バルの高音の歌声が好き〜〜いつまでも聴いていたい〜〜〜一幕のバルジャン改心場面の「石のように心を閉じて生きてきたのだ俺の人生〜〜〜」のところ〜〜あの音が上がる所から変わる声、変わった後の声が好き〜〜〜!!
二幕の「彼を帰して」の場面は下手すると休憩タイムか退屈タイム、間延びタイムになりがちなんですけど、しゅがバルは歌がうますぎて完全に耳が幸せ充実傾聴タイムになったのも良かった。
朗々と響く美声に聞き惚れる時間…彼帰が全く眠くないのすごい。今まで聴いた日本人のバルジャンの彼帰で一番聞き応えあった。海外キャストのCD聴いて聴き慣れてた音を日本人キャストで聴けるの嬉しい〜〜!!!あそこの高音が苦しい人は聴いてて「頑張れ…!!」と手に汗を握ってハラハラしちゃうんですが、そりゃ出来るなら軽々歌いこなして貰って美声と歌に聴き惚れていられた方が嬉しいです〜〜嬉しい〜〜。

欠点というか違和感もあえて言うと、「(腕力が)弱そう!!!」ということ。
とてもジャベとタイマンで喧嘩して素手で勝てるような怪力の持ち主には見えない!!喧嘩弱そう!!!負けそう!!!なんで勝てるの!!?と思った。
馬車も持ち上げられなさそう…(話の都合上持ち上がります!)

佐藤バルジャン、あと10回くらい見たいです。超好き!!!!!!

 

二宮ファンテは、夢破れてのソロの歌唱はそこまで油が乗ってる感じじゃなかったんですが、身を持ち崩していくところから死ぬまでずっともう演技が良くて良くて最高だった。
オペラグラスでいつ見てもいつも良い表情と動きしてて。死に際特に良かったなあ。コゼットの幻覚と戯れる幸せそうな顔から、バルジャンに「守ろう私が」と言われて現実に返った時の悲壮な顔、「お願い」と言いながらバルジャンに縋る顔。ひとつひとつの台詞に乗せられた感情と表情の作りが丁寧でした。

 

井伊ガブ様、めちゃめちゃカッコいいんだがどういうこと????

まず歌が上手い!!子供なのに発声がしっかりしているし、音程もきっちり取れている!!それでいて元気いっぱい、溌剌としていて動きは俊敏、エネルギーに溢れていて、でも子生意気さと見た目怜悧さもあって何?????最高なんだが???????


あと今日リトルエポニーヌの三浦あかりちゃんがめちゃ良かったんが!!?

台詞一言もないのに動き!!腕をくんでふんぞりかえる姿勢とかリトコゼに向かってビシッとさす指とか、演技が目立つよ良いよ!!?台詞一言もないのに!!!!演技だけで目を奪われてしまった!!!!歌も聴いてみたいです!!!

 

屋比久エポ。

初見でしたが良かったですね〜〜!!
見た目のはすっぱさとか細さ、うちに秘めた強靭さとしなやかさ、盗賊団に混じっている時や彼らと対峙した時の動きの俊敏さ、マリウスから本を奪う鮮やかな手つき、そしてオンマイオウンの歌唱力!!

 

竹内マリウス。

良家のお坊ちゃん臭がすごい。
コゼットとぶつかって目があった瞬間「お似合いの上流階層同士が出会ったーー!!!こりゃこの二人がお似合いだーー!!!」という残酷な説得力があった。
そりゃ盗賊の娘で下層階層民のエポとは結ばれないし見向きもしないわという…!!残酷!!!!

立ってるだけで滲み出る育ちの良さとボンボン感がキャラに合ってるのと、歌の上手さが好みです!!
演技もプリュメ街でコゼットに会う前に必死に服のズレを直したり、コゼットに一生懸命な純朴好青年感出てて良かった!
カフェソングは朗々としてて、デビューして間もないのに安定感すごいし上手い!!

もう一度見たい〜〜!!!

 

六角テナルディエと樹里マダム・テナルディエも良かったです!!
六角テナも初見でしたが、前季に見た斎藤テナと似たタイプで、間と笑いの取り方が上手で芸達者、演技上手な方だなと。
滑舌の良い夫婦でいやらしさもそんなになくて、最後の結婚式場面の後は心が軽くなって後味良く見られてありがたかったな。

テナ夫婦の毒やアクが強すぎると、見てて苦しくなってくるんですよね。昨季斎藤テナを見て、芸人さんが熟練の演技でクスリと笑わせながら軽やかに見せてくれると、年々正視に耐えなくなってきた宿屋の場面がこんなに見やすくなるのかと感動したんですが、六角テナも良かった。

実は今は、バルジャンの次くらいの重要度でテナルディエ夫婦のキャストを選ぶようにしています。

ラブリーレイディや宿屋など、レミゼの中でも見ててキツイ貧困場面や人間悪場面の毒や見にくさを抜いてくれるキャストが今の私には大事なようです。

以前はマリコゼエポの方を重視してたけど、変わったなあ。もちろんどのキャストも良い(見ていて楽しい)に越したことはないんですが。

 

ばっちんじょこと、相葉アンジョルラス。

三季目ですが、私は今回が初見でした。「彼は来季もいるだろう」と思って、前季もその前も見送ってしまっていたので、ようやく見られました……!!

幕間の間、一幕のばっちんじょの出てる場面を巻き戻してリピート再生したくて仕方なくなりました…なんで舞台って巻き戻せないんだろう。

小柄なアンジョが好みなので、ばっちんじょは好みより背が高いかなーと思ってました。
やっぱり背は高いです、他の学生より頭半分抜けててとても目立つ。リーダー似合ってる…!!

あと足が長い。ばっちんじょ足が長い。何?股下5mくらいない????????
あと髪型…ポニテ…ロン毛…可愛い…ありがとうロン毛…。

ばっちんじょは旧演出で見たいと思いました。アンジョを英雄視する描写は好きじゃないんですけど、ばっちんじょは一回くらい旧演出の逆さグリコの最期を見たい…リヤカーに載せられた最期ではなく…。

最期まで見終えてもばっちんじょに対する感情を消化しきれていなかったので、出来ればあと5回くらい見て自分の中の印象を整理したい。

けどアンジョルラスは木内君も小野田君も見たい。全員見たい。悩ましい。

 

丹宗グランテール。

ABCカフェでは一人だけ隅っこにいて、他の学生とは明らかに熱気・テンションが違うグランテールの動きがすごく目立ったので、相葉アンジョとの組み合わせだと「わかりやすくリーダー」のアンジョと、「わかりやすく異分子」のグランが舞台上で絵的に明確で震えました…。グラアンだーーーー!!!

グランテール、アンジョが撃たれて後を追ってグランが死ぬ時、バリケード駆け上がって撃たれて、倒れる前に「ヴィヴ・ラ・フランス!!」って叫んだように聴こえた…
たぶん空耳なんですけど、それだと一幕のガブの台詞を踏襲してる上にダブルミーニングも最高だな…と思っていたら本当に叫んでいたようです!!フォロワーさんが教えてくれました(ありがとうございます)!!

最後の最後にグランがフランス万歳って叫ぶの、アンジョの恋人を!!自分からアンジョを奪って殺した恋敵を!!讃えた!!!とも取れるし、フランス=アンジョなので、最期にアンジョを讃えたともとれるし、フランス万歳と叫ぶことで、アンジョの思想や彼が生きて死んだ道を肯定した/受け入れてアンジョと精神的に一つになって死んだ(原作に近い)とも取れるし、ガブローシュの存在とセリフも際立つし、良い台詞すぎて鳥肌立ちました…!!聞けて良かった!!

 

いやー列に入ってきたな…列に入った…(余韻)
これがレミゼだ、レミゼってこういう舞台なんだ!

プリンシパルもアンサンブルも、板の上の人が全員全力で、全員素晴らしい、魂の舞台!!!

レミゼはいつ見ても大体満足度が高いですが、今回は特に良かった気がします。見られて良かったなあ。

 

ミュージカル版を改めて見ると、やっぱり工場の人達とファンティーヌの登場は唐突で(ジャンバルジャンが主人公だと思っていたら急に違う人達中心の場面が始まって)話についていけないし、「ラマルク将軍って誰?」だし、「ラマルク将軍が死んだから何?」だし、学生の名前は聞き取れないしそもそもそれが名前だって台詞を一回聴いただけじゃわからないし、などなど、物語がわかりにくく、初心者に勧めにくい演目だなあと思いました。

でも日本のミュージカルの中では最高の質を誇る演目だなあとも、改めて思いました。

ミュージカル「レ・ミゼラブル」、原作小説未読の方はとりあえず新井版の漫画を全巻読破してから観劇するのがおすすめです。(突然の新井版の宣伝)物語や登場人物が頭に入っていた方が舞台を楽しめると思うので…!!

 

 2012年の映画もわかりやすいかな。今はもうBlu-rayもだいぶお安く買えるので、予習や復習に手頃かも。