黄金羊の観劇記

観劇・映画・読書の感想を好き勝手に書いてます。東宝・宝塚・劇団四季中心、海外ミュージカル(墺英米)贔屓、歴史好き。

「メリリー・ウィー・ロール・アロング 〜あの頃の僕たち〜」感想

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<2021/5/22(土) 12時公演 S席1階14列50番台通路側席>

ソンドハイムのミュージカルをあまり見たことがない(スウィニートッドを劇場で1回、フォリーズをナショナルシアターライブで1回見たくらい)のと、「逆再生」という物語に興味があったのと、「紳士のための愛と殺人の手引き」以来で久々にウエンツ君を生で見てみたかったので行ってきました!メリリー以下略アロング!!

タイトルは和訳すると「僕たちは楽しげに回転しながら動いていく」…?

roll alongには「(計画などが)順調に進む」という意味もあるそうなので、「僕らは楽しく上手いこと進む」といった意味でしょうか。うわ皮肉!!

英語のできない私はこういうタイトルをカタカナのまま表題にされると意味をほとんど汲み取れないので、興業側に然るべき日本語訳を考えてちゃんと付けて欲しいなと思います。私と同じくタイトルで意味が分からず見送った人もきっといると思いますし、タイトルが違えばもっと興味を持ったり訴求する層が広がったりすると思うので、もったいない。

 

結論から言うと、ソンドハイムは個人的に合わなかったです。
メロディーラインが綺麗だなあと思うことは度々あるんですが、一曲が長すぎて中々息がつけないのと、意図的に作っているであろう不協和音に頭が痛くなって疲れてしまった…フォリーズ見た時も同じように感じたからそうなんだろうな…。

曲と場面が長すぎて、長距離走しているというか、息継ぎ出来ないままいつまでもプールの底を泳ぎ続けていて酸欠、みたいな状態になってくるんです。私だけ…?
こんな曲を作れるのは凄いと頭では思うんですが、身体に合わないというか、私が受容するにはレベルが高すぎました、ソンドハイム音楽。

 

舞台の中身は、正直物語に!!もっと!!ひねりが欲しい!!
逆再生していたので「ここに至るまでの過去で何か決定的な事件や面白い伏線があるんだろう」と期待して見ていたのですが、結局最後まで特にそういうことはなかった…ように感じられた。

一番最初の過去とその次の過去あたりで衝撃的な何かが起こり、それからまた現代に飛んで主人公が何かを得たり変わったりして幕引き、という形ならもっとずっとスッキリしたと思うし、そういう構成じゃダメだったのですか!?それじゃ陳腐ですか!!?ねえ!!!

逆再生じゃなく普通再生だったら途中で寝てたかもしれません…。物語としては決して甘くも楽しくもなく、色々しんどいししょっぱいし…。
パレードやアリージャンスほど重く辛くはないだろう、これくらいなら見られるかな、と思って観劇の幅を広げるつもりで観に行ったのですが、うーん。

いや役者さん達の歌と演技とオケの音楽、演出も加えた総合点はまあまあだったので幅を広げるという意味では見に行って良かったといえば良かったですが、見に行かなくても良かったかな…。とにかく物語が個人的にしっくりこなかった、オチが欲しい、、、。

 

登場人物も皆決定的な良い人も悪い人もおらず、良いところも悪いところもある、という意味でとても人間的だと思うのですが、主人公のフランクは女を乗り換えすぎ軽く扱いすぎで普通に屑だと思うし、再婚相手のガッシーも好きになれない。共感したり応援したり出来るキャラが舞台上にいなかったのも見ていて辛かった一因。

チャーリーやメアリーがそのポジションにいてくれれば良かったんですが、応援できるほどの感情や境遇もなかったんですよね…。

フォーリーズのキャラクター達もこんな感じで感情移入が難しかったので、ソンドハイムの人間描写がこういう傾向なのかなと思いました。

いや、描きたいことはわかるんだよソンドハイム!!これも人間だよね!!わかる!!こういう人間いるし、舞台上で表現するとわかりやすいし、舞台の上に乗せて見せる価値もあるかもしれない!!でも残念ながら私はエンタメとして楽しめなかった!!応援したい人がいないんだもの!!たとえば物語は悲惨でも、バルジャンとかジャベールとかエポとか学生とか、応援したいキャラがいるレミゼはとても楽しいし何度もリピートしたくなる作品なのに…ッ!!

メリリーはブロードウェイでは初演でコケた作品ということですが、響かなかった当時の観客側の気持ちが正直わかりました…。

 

久々に生で見たウエンツ君は「紳士〜」の時より演技が上手くなってた気がしました!!舞台上での存在感がより増してた!!存在の輪郭がより明確になってた!!
ウエンツ君のソロ曲の演技、キビキビした身振りが良かったなあ。

チャーリーとメアリーが歌う「Old friend」という曲も良かった。


メリリーはあらすじからして楽しい話ではない予感はしていたので、経験を買うつもりで見に行ったのですが、本当に「楽しみより身の肥やしの為の観劇」という感じでした。エンタメ度低め。

でも劇場が新国立劇場だったので新国立劇場を信じて行ったのは正解。そんなに低クオリティの舞台はやらないよねここならと。演出が良くて舞台作品としてはまあまあ上質でした。音楽もリーヴァイやワイルドホーンみたいなキャッチーさはないし、物語含め玄人の大人向け舞台ですね。

この舞台をしみじみと「ああ、これこそ人間の営みだなあ・・・」と咀嚼して楽しめるほどの精神にはまだ私は達せていなかった。

色々達観した老年期には楽しめるようになっているかもしれません。

 

「逆再生」という手法は面白いし、自分もこれで一本何かお話を考えて作ってみたいと思いました。

あとやっぱ生の舞台はエネルギーがあって良いです。観劇が好き!!