黄金羊の観劇記

観劇・映画・読書の感想を好き勝手に書いてます。東宝・宝塚・劇団四季中心、海外ミュージカル(墺英米)贔屓、歴史好き。

ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」2021年版1回目感想 〜死の街ヴェローナと光の子供達〜

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2021/5/29(土) 17時30分公演 B席2階L列20番台センター席>

ロミジュリLV.200のフォロワーさんの感想ツイートに触発されて、チケットを買い足して早めに見に行ったら100点満点で300点のめちゃめちゃ良い舞台を見られました………。ありがとうフォロワー。やはり玄人フォロワーの感想は信頼できる…。

 

冒頭のヴェローナの場面、静止した役者達が位置についている時、「あ、この舞台は良い舞台だ」ともう直感しました。
舞台の上に張り巡らされた緊張感とエネルギーが見えた。
そして音楽が始まり皆が動き踊り出したらそれが弾けました。

 

この舞台の感想を雑に言うと、「みんな元気で良いですね!!」(完)と一言でまとまってしまうんですが、本当に「元気」で「良い」。

生命力と熱気、活気とエネルギーに満ち満ちていて、それが爆発していた。キャスト入れ替えて常に若い役者達が演じる舞台ロミジュリ、その真骨頂のような進化と変化を感じました。

役者が若返るとこんなことが起きるんですね。
外部版初演の空気を感じたんです。今季のロミジュリは空気が初演に近い。

黒羽ロミオ以外の若手は音域によっては声が出ておらず、手に汗握ることもありましたが、演技部分が全力で好感なので総合点でカバーって感じでした。

 

コロナ禍の影響もあるんだと思います。レミゼでも感じました。いつ舞台が中止になるかもわからない、国中疫病が蔓延した、舞台役者や関係者にとっては絶望的な状況の中、日々板の上に立っているという緊張感が、役者さん達の演技を押し上げているんだろうな。

 

私がミュージカルロミジュリを初めて見たのはフランス初演版DVDでした。その後ブダペストハンガリー版を見て唖然とし、ウィーンでルカスロミオを見てガチ恋し、宝塚の梅田芸術劇場星組初演も見、フランス再演来日版も見に行き、この東宝ホリプロ版は初演から今まで再演される度に毎回見てきました。日本に来る前からずっと追いかけて見守ってきた大好きな演目で、エリザベートモーツァルト!と並ぶ思い入れのある特別な演目です。

けれど今回の観劇で、東宝ホリプロ版に関しては、やっと物語が「視えた」と思いました。

今まで頭の中にボンヤリと浮かんで、意識に引っ掛かりはしていた色々なことが、今回全部自分の中で言葉になり、理解できた。明確になった。繋がって一つの完成した世界、完結した物語になった。思い込みですが、「この舞台を作った演出家(小池先生)は、このミュージカルをこういう物語として観客に提示したかったんじゃないか」という物語と世界がようやく見えた。それがすごく嬉しかった。

そしてこれほど何度も見たのに今まで掴めていなかったこと気づいてビックリした。

 

この日は2階最後列センターで見てたんですけど、舞台全体が綺麗に見えて、神の視線で色々なことを考えながら見られて超…良かったです…。
2階最前列もいいけど、最後列には最後列の良さがありますね。今回の観劇では、舞台と自分の距離の遠さが良いように作用したと思う。

最後の場面で「死」の動きをずっと追えたのは最後列だったからだろうと思うんですよね。

照明や舞台上のセット、アンサンブルのフォーメーションも、板の上の全てが視界に入ったおかげで色々なものを拾えた。もちろん拾えなかった物もたくさんありますが。

これからも2階最後列で色々な演目を見てみたい。お財布にも優しい。B席の怪人に俺はなる。

 

役者ごとの感想。

 

・岡大公

いやロミジュリちゃうんかい、と思われそうですがこの舞台はもうまず岡大公から語らざるを得ない絶大なインパクト。全人類が待ち望んでいた最高の大公。

パワー溢れる若者達の中にいても一際目立つ長身、朗々と響く美声、声量、歌唱力。皆を平伏させる、貴方が大公です!!!説得力!!!!

岡さん大公のヴェローナ、冒頭もリプライズも永遠に聴いていたかった。力強く気持ち良く朗々と歌い上げてくれる素晴らしいヴェローナ、ぜひCDかBlu-rayで残して欲しい…。

 

・黒羽ロミオ

大変なハマり役。たぶん当たり役になるし名キャスティングとして語り継がれそう。
優しく柔らかく甘い雰囲気で、美形でスタイルも良い御曹司で正統派王子様キャラ。10代20代のリア恋勢を大量発生させそう。

モンタギューの若者達に慕われ、輪の真ん中に居ることに説得力のある、誠実で爽やかな好青年。

一幕でジュリエットと恋に落ちるくだり、すべての動きと演技と歌が丁寧かつ熱くて。

二幕の「世界の全てが闇に沈んだー!!」の慟哭と絶望も良かった…そして死ぬまでもうずっと良かった。
「恋した、駆け抜けた、生きた」って感じでした。
舞台の上で全力で生きてた。

既に安定感があり、歌唱力も文句なし不満なし。これならルキーニやれたんだろうなと思うし見てみたかった。

 

・天翔ジュリエット

天翔ジュリエットも良い!!
歌はところどころ不安定になるけど、よく通る綺麗な声をしていて、発声もまあまあちゃんと出来てる!!

演技に嫌味がなくて純粋無垢・可憐な雰囲気で可愛くて、とても良いジュリエット!!

  

・吉田ティボルト

生真面目で誠実で不器用で一生懸命。今まで見たティボルトの中で一番責任感が強くて誠実。中身は朴訥な好青年系。でもロミオと違って小器用さや柔らかさがないからジュリエットとは結ばれないのが、筋を知らなくても舞台上で明白。素晴らしい。

キャピュレットの跡取り意識が強く、跡取りとしてしっかり役目を果たさなければという意識が肥大して潰されてしまった感。

「俺はティボルト」の身を切るような叫び。「ティボルト」は自分の名前のことじゃないんだね。「俺はティボルトという存在」って叫んでたんだね。「俺はティボルトを負わされている」ともとれた。あんなに体の奥から絞り出すような辛さを見せてくれるティボルト初めてだった。

「本当の俺じゃない」の絞り出すような歌と演技が良すぎて、最後に「今の俺を救えるのは、愛する君だけ…おお、ジュリエット」と歌ったすぐ次にバルコニーでジュリエットが「夜空の星達が皆輝いている〜♪」とロミオへの愛を歌い出すの、残酷さが際立って号泣してしまった。

ここの流れ、今までキャストによっては下手すると「ティボルトwww可哀想www」と半笑いになってしまうこともあったんですが、吉田ティボが素晴らしいので本来脚本上成立させたかったのであろう感情が自分の中に見事に起こって、そのことに感動した。

「救えるの〜は〜♪」でオクターブ上げてくれたのも最高でした。
(城田ティボでこの音を聴いてから、もうここは上げてくれないと物足りない身体になってしまった)

 

・春野キャピュレット夫人

今回のキーパーソンその1。続投して全季より演技に深みが増していた。お歌は油が乗りっいたとはいえないけど、春野ママの演技の含みの持たせ方のおかげで私の頭の中でようやく一つの着想が形になった。貴婦人の訪問といい、裏と影のある役の演技が本当にお上手。

私は今まで基本的に「各人が喋っていることは全て真実・本音」という前提でこの演目を見ていたんですが、それが覆されました。目から鱗

 

・兼崎パリス&宮川キャピュレット卿

今日一番のダークホース。
パリスが登場してジュリエットに求婚する場面で、パリスが浮かれてキャピュ卿を持ち上げて振り回す動きをしまして。バルジャンが子コゼットにするような。

その時私の中で「パリス×キャピュ父」のスイッチがバチーーーンと入ってそれからその見方が止まらなくなってしまったんですけどどうしてくれます!!!?!?
いやこの場面で娘に求婚に来たパリスに父が惚れちゃったパリス←キャピュ父前提でその後の話を眺めると色々楽しい…!!!
仮面舞踏会の場面は見どころが多すぎて、頑張って見ていても全然追いきれなかったのですが、主にパリスとキャピュ父のやりとりが始まるとそっちが気になって見てる間にロミオとジュリエットとティボルトを見失ったりしたせいな気がします!!

というかパリスがジュリエットじゃなくキャピュ父に惚れて求婚に来ていれば全方向丸く収まりません???まずキャピュ母は喜んで夫とパリスの仲を応援して離婚するだろうし、ヴェローナ一の大金持ちとの縁組でキャピュレット家は安泰、将来の心配がなくなったティボルトは更生に成功、ロミオとジュリエットは幸せに結婚。ハッピーエンドじゃん!!??!?

 

・石井カズさん神父

いやーーカズさん、大公も良かったけど神父も良かった…!!!
どちらかしか選べないなら、岡さん大公カズさん神父を推します!!!
大人組も色々役を回った末、一番ハマるポジションに落ち着いた感…!!

カズさん神父、一目見た瞬間「ドン・カミッロだ!!!!」(※私の最愛ミュージカルの主人公)と思いました。神父服が似合っていて、立ち姿がドン・カミッロに見えた…!!そういえば舞台設定の場所も北イタリアで近い!!カズさん将来ドンカミッロやってくれないかな!!?腕力は足りなそうだけどコメディ力が上がれば行けると思うんだが!!!

とはいえ、神父服を着ているだけでドン・カミッロに見えたりするものかな?と自分で自分に疑問を思いつつ見ていたのですが、最後に謎が解けました。

カズさん神父は、終盤ロミオとジュリエットの亡骸を前に、後ろに掲げられたイエスの像を振り返り、見つめながら「何故、何故?」と問いかけていた。

ジーザス像と対話している!!!!(衝撃)だからドン・カミッロを感じたのか!!!!

要するにこれまでの外部ロミジュリ神父で一番信仰心が感じられたんです、カズさん神父の演技。「神父」らしかった。

そしてカズさん神父が見つめるジーザス像に「死」が貼り付いていたおかげで、物語の枠組みが全て一気に見えた。今回のキーパーソンその2。

私は神と信仰心を感じさせてくれる神父をこれまでずっと見たかったんだ…と、カズさん神父を見て初めてわかった。

 

・アンサンブル

アンサンブルのフォーメーション、振り付けが更に良くなってて、2階から見てるととても楽しかった。宙組版アナスタシアのアンサンブルの動きを彷彿とさせられた。
そしてたぶんまたダンサー枠採用なのかな?アンサンブルの皆さんに動きにキレとエネルギーがあった。弾ける若さ!元気爆発!!
レミゼもですが、アンサンブルにパワーがある舞台は世界観がしっかりするし、生きた世界になりますね!!

 

以下、今回見えた幻覚の話。全部妄想です。

 

 

・ティボルトとキャピュママの関係について

 「涙の谷」の場面。鏡の前で歌う春野キャピュママ「愛のない結婚に悶える私の目の前に、その男は現れた」の台詞、「その男」はティボルトそっくりの姿をしていた(幻覚)
これがティボルトの父。ティボルトはキャピュママとその男(キャピュ母が本当に愛した人)の子供。

つまりティボルトとジュリエットは従兄妹ではなく異父兄妹。
あーーーーそりゃ結婚できねえーーー!!!!(天啓)

「従兄弟同士の結婚は禁じられたキャピュレットのさだめ」っておかしいと思ってたんですよずっと!!!
物語のひっかかりが解けたーー!!!

 

これは春野ママが色々な方向に嘘をついている(という幻覚を私は見た)んですよ!!!

そうすると物語が全部納得できる綺麗な展開と関係になるんですよ!!!!
ティボルトにはもちろん実の息子ってことは隠してるし甥っ子だって言ってる!!

キャピュ母とティボルトは血の繋がりのない叔母と甥でこの二人は愛人関係だと今までは解釈していたけど、春野ママは実の息子を恋人のように扱う毒母でもいけると思うのでそっちを選びます!!

というか今季の春野ママは前季よりも妖艶さが抜けて、そもそも序盤のティボルトに色目を使う演技が抑え目になったと感じたんですよ。あそこは「最愛の人に生き写しの息子(本人はそのことを知らない)を大事にしたい、それを伝えたくても伝えられないもどかしさと葛藤故の粘着動作」だと思えばそう思えなくもない気がする!

 

春野ママは娘と夫にも嘘をついてて、ジュリエットはキャピュ父の実の娘。
という前提で二幕のジュリエットの「私の親じゃないわ、貴方も、貴方も!!」という台詞を聞くと、それは誤解やーーー!!!という悲しみで味わいが更に深くなるし、キャピュ父のソロの可哀想さも増してよい。

そして愛した男との間に生まれた息子で、愛した人に生き写しの姿をしているティボルトを、愛していない夫との間に生まれた娘より贔屓し、「我が家の跡取り」と呼んで可愛がり、大切にするキャピュママ。これも自然な気がする。

 

ティボルトのジュリエットへの恋心に気付いた母が急いでジュリエットをティボルト以外の相手と結婚させようとしたのはティボルトの恋を阻止しようとした為だし、実の息子が実の娘に恋してしまってたら母として当然。

 

二幕の「キャピュレットの跡取り、勇敢なティボルトが亡くなった」という台詞、本当は甥じゃなく実の息子を亡くしていた母の心境を思うと…血筋的にはある意味正しくキャピュレットの跡取りだったティボルト…可哀想。

 

吉田ティボルトの「歪められた」「大人達が仕向けた」という台詞の真実味の強さを思うと、裏にはこれくらい捻れた、語られない事情があったと言われても納得が行く。

 

ティボルトとジュリエットは実兄妹の(妄想)設定を好む人、私の他にいないでしょうか。語り合いたい。

 

 

・今回解釈した外部版ロミジュリの物語
これは「ヴェローナ」という街を舞台に繰り広げられる「死」と「その他の登場人物全員」の戦いの物語でした。

「死」とは災厄、狂気。人心を惑わし、悲観させ、互いに憎み争わせ、殺し合わせる禍々しい気配。神の一種かもしれない。

冒頭で「死」が一人で登場し、存在を誇示しながら踊るのは、「死」がこの物語の裏主人公だからだったんだな。

 

今より少し昔の話。天から黒い災厄=「死」が落ちてきた。(プロローグ)
「死」の力はヴェローナの街を多い、人々を狂わせ、互いに殺し合わせた。

やがて人々はモンタギューとキャピュレットの両家両陣営に分かれ、憎み合うようになっていった。(「ヴェローナ」〜「憎しみ」)

 

ある日、街に男の子が生まれた。モンタギュー家の跡取りとして生まれた、彼の名はロミオといった。

しばらく後、今度はキャピュレット家当主の家に女の子が生まれた。彼女の名はジュリエットと言った。

彼らはこの狂気と憎しみに覆われた街で、濁りのない心と目、純粋さを保っていた。彼らは愛を信じていた。(「いつか」)

「死」は気づいた。自分が支配するヴェローナの、闇の霧を祓う可能性があるとしたらこの子供達だと。

「死」は彼らをつけ回し、彼らの死を画策するようになった。(「僕は怖い」)

ヴェローナ中で全く狂気に取り憑かれていない人間は、ロミオとジュリエットの二人だけだった。

その他の人間は(「死」の影響で)どこかしら狂っていて目が濁っている。
ロミオとジュリエットだけが、最初から本当の世界が見えていた。

 

親友二人と共にいても、モンタギューの若者達に囲まれて皆で楽しくしていても、攻撃的で享楽的な彼らの中で、真面目で誠実なロミオは異質だった。
ジュリエットも同じく、現実的で打算的、阿諛追従や虚言の蔓延るキャピュレットの中で浮いていた。彼女もまた、真面目で誠実だった。

 

ロミオやジュリエットを知った人達は、皆彼らを愛し、彼らを求めた。

そこに救いがあると感じ取った人達が、本能的に二人に群がっていたのだ。明かりに引き寄せられる蛾のように。

彼らはヴェローナという地獄に神が垂らした蜘蛛の糸のようだった。

 

ロミオとジュリエットは出逢い、一目で惹かれあった。
すぐに分かった、この相手は自分と同じ「愛」を心に持っていると。世界でたった一人、自分と同じものが見えている人だと。

他の人間達が全員憎しみと狂気に取り憑かれて濁った目をし、黒く澱んだ空気を纏っている中、お互いだけは白く無垢な存在で、澄んだ目をしていた。

それは神に守られた、約束された出逢いだった。(「天使の歌が聞こえる」)

 

(中略)

ティボルトに刺されたマーキューシオ。ロミオとベンボーリオの腕に抱かれ、赤い血と共に黒い狂気も流れ出て目の曇りが晴れる。最後の最後にロミオが行こうとした道、貫こうとした愛こそ正しかった、それこそがこの街の皆を狂気と憎しみから救うのだと気づき、「ロミオ、ジュリエットを愛し抜け」と言い残して死ぬ。最後に愛の存在に気づき、浄化されたマーキューシオの魂(死顔)は安らかだった。

 

ティボルトがマーキューシオを殺し、ロミオがティボルトを殺してしまった。流される若者達の血。それでも止まらない暴走。むしろ勢いを増す憎しみ。
マーキューシオの死とロミオの追放で目が晴れたベンボーリオの目に写る、異様な人々。「やめろ、みんな、狂っている!!」悲痛な叫び。届かない叫び。

(ここの場面で人々の狂気と自分の叫びが届かない無力に絶望して長いこと床に伏せ続ける前田ベンボ、良かったです………(絶望して床にうずくまるという動きが好き))

 

(中略)

ロミオが亡くなり、後を追ってジュリエットも亡くなった。二人は愛を貫き、ヴェローナからは光が消えた。

二人が死んでいる霊廟で、死はキリスト像に張り付き、キリスト像と同じポーズを取っていた。(本物の神を覆い神の存在を隠し、この街の神に成り代わろうとしていた)
神父は必死に神に祈っていたが、彼が祈りを届けている相手は厄災そのものだった。祈りは神に届いていなかった。

そして霊廟で皆がまた争いを始めた。天にいる災厄は勝ち誇るように両手を広げた。
ヴェローナは災厄と狂気の支配が続く。永遠に憎み、争う定めから逃れられない。

街は「死」による支配が続くかに見えた。


しかし死してなお握った手を離さないロミオとジュリエットの亡骸を前に、母親達が叫んだ。「待って!」「二人は愛し合っていたのよ」

人々はロミオとジュリエットの亡骸を静かに見つめた。

狂気が晴れ始めた。
人々は愛の存在を思い出し、その目は光を取り戻し始めた。

それまで余裕の笑みを浮かべ、憎しみの成就を期待して天から人々を眺めていた「死」が、苦しみ始めた。
人々を支配しようと手をかざし、狂気と憎しみを留めようとした。
けれど無駄だった。人々の目覚めは止まらない。皆がロミオとジュリエットを見つめ、どんどん正気を取り戻していく。

 

ロミオとジュリエットが貫いた真実の愛はヴェローナを光で包み、街を包んでいた黒い霧を晴らし、とうとうすべての人々に正気を取り戻させた。
居場所と寄生元を失った死はのたうち回って苦しみ、静かに消滅した。

 

ヴェローナの人々は、自分達の狂気と憎しみを祓い、愛と許し、信頼を取り戻させてくれたロミオとジュリエットに心から感謝した。

「二人の愛は永遠に残る。愛を貫いたロミオとジュリエット…」

ロミオとジュリエットの名と、二人の愛は永遠に、神に寿がれながら生き続ける。

<完>

 

 

お疲れ様でした!!!!

ここまでクソ長い妄想を読んでくださってありがとうございました!!!!!!!

 

いやもう、ロミオとジュリエットが死んでからフィナーレまでの最後の場面の展開と盛り上がりが予想外で物凄かったのですが、伝わりましたでしょうか。

「なんか最後に死がのたうち回って苦しんで息絶えてるな〜」ということはずっと分かってたんですけど、それがこういう物語だと、自分の中で形を取らなかったんですよね、今まで。


今までロミジュリは「何もかも親世代が悪い…子供達かわいそう」と思っていたけど、今回は全員被害者に見えました。

キャピュ母が捻れてしまったのは愛のない結婚をさせられたせいだし、キャピュ父がお金に困っていたのも「死」に錯乱させられたせいかもしれないし、根本的に全部「死」が悪いけど、「死」は意志も人格もないただの厄災なので、つまりヴェローナは運が悪かっただけ。

この物語を感じられる為には、「死」の演者は相当スケールが大きく技量のある人でないといけないと思うんですが、堀内死、見事でした。成立していた〜〜!!!!

 

ロミオとジュリエットは死によって憎しみと狂気に覆われたヴェローナを救う為に神様が遣わした天使のような存在。いや普通の人間なんですけど。
あの街のあの環境でこんな純粋な子供達が育ったことが奇跡…となると二人を育てた神父と乳母も鍵になるはず。

カズさん神父は「彼がロミオを穢れから守って育てたから奇跡が起こったのだ」と解釈出来るんですけど、乳母がな〜〜一幕のソロまではいいんですけど二幕の豹変があるのでどうしてもそこは弱いですね!!(解釈の限界)

 

最初はロミオだけ正気でベンマキュも狂気に取り憑かれていたのが、死ぬ間際にマーキューシオが、そしてロミオが追放になった後にはベンボーリオの狂気が晴れて、親友二人がロミオと同じ目で世界を見られるようになっていくのは胸熱な展開ですね!!

 

ロミオとジュリエットの死は無駄じゃなかったし、二人の愛は永遠に残るし、二人の愛は本物だったし、ヴェローナの街の誰も悪い人はいなかった。「死」に狂わされていただけだった。

胸糞要素は全くないし、ハッピーエンド!!!

神に遣わされて地上で生き、愛と使命を全うして亡くなったロミオとジュリエットは、きっと天上の愛の城で一緒に幸せに暮らしてるよ…!!

正気に戻ったヴェローナの人々も、きっとこれから皆幸せになれる。

闇の終わり、夜明けを感じさせるハッピーエンドでした。

 

この解釈だと物語が単純明快になって、キャラに感情移入もできるしエンタメ度が上がって見やすく楽しくはなるけど、狂気や憎しみといった悪感情の原因と責任を全て外部(死)に転嫁しているので、哲学度や芸術性は下がってしまうなあ。
良心と悪心の相剋が悲劇の見せ場で魅力だと思うし、シェイクスピアの脚本上では存在していた登場人物の人間味や悲劇性の一部を消してしまう解釈でもあるんだよな。難しい。

 

 

 

初演から見続けた外部版ミュージカルロミジュリ、今回「自分の中では、外部版ミュージカルロミジュリの物語は基本的にこう」と語ることが出来る設定と物語が出来ました。楽しかった〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!

 

とはいえ今季のロミジュリはまだ序盤。まだ観劇予定があるので、自分の中の印象や妄想設定はこれからまだまだ変わっていくかもしれません。楽しみです!!