黄金羊の観劇記

観劇・映画・読書の感想を好き勝手に書いてます。東宝・宝塚・劇団四季中心、海外ミュージカル(墺英米)贔屓、歴史好き。

宝塚宙組「アナスタシア」1回目感想

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<2021/2/2 11時公演 B席2階12列センター>

 

「アナスタシア」は、ロシア革命で惨殺されたロマノフ皇帝一家の末娘・アナスタシアが実は生きていた、という伝説をネタにしたブロードウェイミュージカル。初演は2017年。

日本版は梅田芸術劇場が製作、2019年3月初演。コロナ禍で一部公演が延期になったので、見逃してしまった方も多いのでは無いでしょうか。

私はというと、東京公演があまり好きではない劇場での上演だったのでチケットを買おうかどうか悩んでいたら、あれよあれよという間に公演数が激減してチケット難が起こったせいで見られなかった勢です。

 

一応見る気はあったので、まずドイツ版のCDを購入。ブロードウェイ版のCDもAmazonミュージックにあったので、この2ヶ国のアルバムを何度も聴いて予習はしていました。

音楽だけを聴いた印象は「軽く明るく楽しいハッピーミュージカル」「内容に深みはあまりない」「曲はまあまあ良い」というもので、見ている間それなりに楽しめはしても自分の心の中に何かが残りそうな物語ではないかなと。

しかしロシア革命のロマノフ家側の人間が物語の主人公という点で物悲しさは不可避だと思うのに、一体何をどうやってこの題材で何の闇も感じさせないハッピーミュージカルに仕立て上げているんだ?という興味はありました。

加えて不妊治療と度重なる流産、コロナ禍での感染や将来への不安から、しばらく重くて暗い真面目な内容の演目よりも軽く明るく幸せな物語を観たいという気持ちが強まり、曲の良さからそれなりのクオリティは期待できるので、B席のチケットを取って宝塚宙組版を観劇しました。今はアラジンとかアナスタシアとかそういう演目をひたすら見ていたい、そういう気分。

 

チケットですが、コロナによる自粛で皆が観劇を控えていた時期だったのか、一般販売開始後1週間ほど経ってからでも公式サイトで普通に購入できて感動した。宝塚の特に東京公演のチケットの普段の激戦ぶりを思うと隔世の感。いつもこれくらい簡単にチケットを買えればいいのに、宝塚。ちなみに、チケットは緊急事態宣言による座席制限(総座席数の50&以内)と同時に完売状態になってしまいました。チケット購入も一期一会で難しい時代ですね…。

 

で、宙組版の感想ですが。

演目としての一番の売り・魅力は、楽曲の良さと衣装と映像と舞台装置の豪華さですね!!

変わらずバカ予算で観客を殴ってくる宝塚!!大好き!!もっと殴って!!!

 

登場人物は全員好感を持てるキャラクターをしていて、見ていてストレスフリー。

演技に不自然さや無理を感じる人もおらず、海外のキャストに比べればパワーは物足りないものの、役者さん全員演技も歌もまあまあ。特にリリーとヴラドの熟年カップル、皇太后様は演技が良かった。作中一番泣けたのは皇太后様とアーニャの再会でした…。グレブも安定していてよかった。

 

ディミトリとアーニャはたまに歌声が裏がっていて、綺麗に歌えていないことがあって気になりました。アーニャは娘役だから裏声を使わないといけなくて、地声と裏声を切り替える時に歌声の流れが不自然になってしまうのろうとは思うのですが、全部地声で歌ってしまえば良いのになあ。

 

ディミトリの「My Petersburg」はこのミュージカル全編通して一番好きな曲なのですが、この曲の歌唱が不安定で残念だったなあ。特に一番最後の音が低かったのにはテンションが下がってしまいました…朗々と歌い上げて欲しかった。

ディミトリの聞いたことないソロ曲があったんですが、新曲かな?宝塚用に描き下ろしがあったのでしょうか。エリザベートでも愛と死の輪舞とかありましたしね。ただ、あまり頭に残らないメロディで印象が薄い曲なので残念。この曲を入れるくらいならマイペテルブルクにもっと力を入れて最後の高音もあげればいいのにと思ってしまった。

 

そしてこのミュージカルで一番有名であろう代表曲、アーニャのソロ 「Journey to the past」は、ディミトリとアーニャのまさかのデュエットになっていて愕然。

そうか〜〜そこをディマとアナスタシアのデュエットにするか〜〜!!!なるほどねーー!!!一幕最後の一番盛り上がる曲だし、どんな話も男役を主役に書き直す宝塚仕様にするには仕方ないかー!!!と、頭ではわかるもののやはり残念でした。この曲をデュエットにするのはエリザの「私だけに」をトートとのデュエットにするくらいの暴挙だよお!!ヒロインのキャラクターを表現する肝の曲なのにそんなあ!!というお気持ち。

 

英語版もドイツ語版も歌詞の内容やどんな場面かはほぼわからずに聴いていたのですが、実際に見てみて一番驚いたのは「In a crowd of thousands」。こんな内容だったのね!!まさか昔に出会っていた設定とは!!!
せっかくロマンチックな巡り合いで二人の気持ちが大きくなっていく素敵な場面なのに、演出がやや寂しかったなあ。あと、内容に少し唐突感があった。序盤のどこかに実際のパレードの場面を挟むとか、この曲の内容に繋がる伏線を貼るのは無理だったのかな。

 

作劇はテンポが良く、各場面から場面への繋ぎもスムーズで全くダレを感じませんでした。

盆の使い方が上手く、映像の使い方も効果的!円盤になると舞台後方の映像や板の上のライトはほぼ映らないだろうからもったいないなあ。2階後方席でしたが、板の上の照明や大人数のアンサンブルの動きが綺麗に見えて引きこまれました。映像で見るより出来れば劇場で体験したい演目。

 

脚本としては、悪役かと思っていたグレブも蓋を開けてみれば可愛いおじさんで、悪役がいないのに驚いた。全体的に幸せな世界!!!「完成度の高いハッピーミュージカル」との評判に偽りなし!!

 

ただ、物語の構成と本編は確かにほぼハッピーなんですが、ロマノフ一家が出てくるたびに情緒が即死して私は割とキツかったです!!!!結構な頻度で出てくるんだなこれが!!!

 

アナスタシアはブロードウェイが全力出して作ってみた歴史大河系ミュージカルという感じ。ディズニーと同じ路線のアニメ映画を基にしているという点も大きいかもしれませんが、それでもロンドンやウィーンで歴史物が作られたらこうはならないのではないかと…浅さというか物足りなさを感じました。

物語の内容・本筋はマイフェアレディのようなもので、歴史上の出来事(ロシア革命など)が中心ではないしなあ。

 

という感じで、初回の印象は「可もなく不可もなく…見ている間は楽しいけれど特に心に何も残らないし、Blu-rayは買わなくてもいいかな」という程度のものでした。

そしてその印象は後日2回目の観劇で見事に覆ることになるのです…。

 

2回目の感想に続く!

 

↓宝塚宙組Blu-ray。これぞ王道ミュージカル、という世界観を自宅で!

 

↓ブロードウェイ版CD。楽曲を堪能できます!

 

↓元になったアニメ映画版。悪役が…ラスプーチン!!?