黄金羊の観劇記

観劇・映画・読書の感想を好き勝手に書いてます。東宝・宝塚・劇団四季中心、海外ミュージカル(墺英米)贔屓、歴史好き。

劇団四季「アナと雪の女王」初日感想

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2021/6/24(木) 13時公演 S席1階15列10番台サイドブロック>

 

初日キャスト(敬称略)

エルサ:岡本 瑞恵
アナ:三平 果歩
クリストフ:神永 東吾
オラフ:小林 英恵
ハンス:杉浦 洸
ウェーゼルトン:山本 道
スヴェン:沢樹 陽聖
パビー:大森 瑞樹
パルダ:松本 菜緒
オーケン:竹内 一樹
アグナル王:阿久津 陽一郎
イドゥーナ妃:髙岡 育衣
ヤングエルサ:鈴木 麗衣
ヤングアナ:山口 りりの

 

ずっと楽しみにしていた劇団四季アナと雪の女王」、チケットにご縁があり初日公演を見に行くことが出来ました!!

おそらく舞台上の役者さんは厚手の冬服を着ている人が多いからでしょうが、劇場内は結構寒かったので、夏場の観劇時は厚手の羽織り物を持っていくことをお勧めします。

 

私はウィキッド日本初演キャスト(濱田めぐみエルファバ&沼尾めぐみグリンダのコンビ)を生で見られなかったことを一生引きずるだろうと思っており、一生引きずる後悔をこれ以上増やさないためにもアナ雪の開幕キャストは見たかったので、初日に見られて良かったです…!!

いやもう期待はしていましたが、客席の熱気もキャストの緊張感も高くて!!さすがに硬さは感じますが、初日にベストキャストを持ってくると聞いていた四季の初日をようやく拝めて感無量です。ベストキャスト…アナもエルサも素晴らしい配役ですわこれは!!

私はアナ雪の映画がめちゃくちゃ好きで披露宴でも曲を使ったし思い入れも深いけど、特に岡本エルサと三平アナとあと小林オラフがとても役にハマっていて、可愛くて魅力的で歌も演技も上手くて、愛情と思いやりも感じられて素晴らしかったです。ありがとう劇団四季……。

 

歌詞は映画とほぼ同じ曲もあれば、サビや要所は同じだけれどその他は映画とは結構違う曲もありました。アナ雪は曲が好きすぎて映画版サントラを何千回も聞いているので歌詞の違いが今はまだ気になるけど、四季版もCD出たらエンドレスリピートするだろうし将来的には気にならなくなるかな。

歌詞の変更点は英語歌詞により内容が近くなっている気がしたのと、一文を短くして歌いやすく&なるべく瞬時に意味を把握できるように改めたのかなと思いました。

新しい追加曲はまだどれもピンと来てないな…CD買って聞き込めば変わるかもしれない。エルサの新ソロの「モンスター」は歌詞の内容的にも「観客を感動させる良い曲・場面にしたい」という制作側の意図は感じるものの、残念ながら特に響かなかった…。ただ、これから役者さん達の演技に油が乗ってくれば響くようになる可能性は大いにあると思うので、次回の観劇時に期待。

 

私の中では、幕間時点での「ものすごい演目だこれは!!」という興奮度は、
1.ウィキッド 2.アラジン 3.アナ雪

総合点は
1.アラジン 2.ウィキッド 3.アナ雪

でした。

演目の出来に役者さんの力も掛け合わされてくるので、どの演目を見るのが一番良いかは言い切れないですが、アナ雪はアラジンのように老若男女誰にでもオススメできる演目という訳ではなく、ほぼ女性にしかウケないんじゃないかなと思う。個人的にはリピートしたいけど、ブロードウェイの評判を聞いて想像した通りの満足度。

 

映画版は音楽とキャラは良いけど物語が雑だと思っているのですが、舞台版も同じ印象でした。
フィエロが空気でエルグリがくっつくウィキッドのようなアナ雪!!ハッピーエンドウィキッド!!
なるほどブロードウェイでファミリーミュージカルと言われたのがなんとなくわかりました。ハッピーエンドは良いと思うんですが、舞台化にあたって、美女と野獣やアラジンに比べると物語が練られていない印象を受けました。

もうちょっと映画版の穴を埋める設定と物語にして欲しかったな〜!!せっかく別媒体で再構成するならもっと脚本を改善して完成度を上げて欲しかった!!!映画版の気になる欠点ほぼそのまんまか〜〜!!!という残念感が正直あった。

ブロードウェイ版は映画の大ヒットを受けて相当急いで作らせたと聞いたから練り上げてる時間がなかったんだろうなと思うのですが、あまりにも惜しい…!!!せっかくのドル箱コンテンツなんだからそこはもっと慎重に丁寧に、クオリティの高さを上げてほしかった…!!!

映画では映像の迫力とテンポの良さ、愛嬌のあるアニメ表現のキャラクターのおかげで気にならなかった色々な粗が目立ってしまった気がする。

曲と舞台装置は良いのですが、物語は基本的に映画のままなので、姉妹愛に号泣して歌で満足できる人以外は正直そこまでおすすめの演目…ではない。

ハンスもクリストフも二幕終盤空気。男性陣の存在感がめちゃ希薄。

舞台版だと映画より更にクリストフの存在が謎に感じました。オーケンも謎なんだよな…

クリストフとハンスがもっと物語の穴を埋める演技やキャラクター性、存在感を見せてくれたら印象が変わると思うので、脚本を変えられない以上キャストさんに頑張ってほしいな…。無茶な要求なのは承知ですが、舞台版アナ雪がここから傑作に化けるにはそれしかない気がする。

 

ただ、生身の人間が演じることで映画と印象が変わったことも色々あって面白かった。

例えばハンスとアナのデュエットは、映画初見時は特に何も感じずそんなもんかと思いながら見ていて、「出会ったばかりの人と結婚すると言い出す」ことに特におかしさを感じなかったんですよね。アニメの世界では一目惚れなんてよくある話だと思ったので、作中でそこをつっこまれてむしろ驚いた思い出。

ハンスとアナの特急恋愛は、舞台で実際の人間が演じたことで、アニメより「ありそう」感が増してて良かった。
20代前半で広い社会に出て初めて恋人ができて、舞い上がった状態でそのまま勢いで結婚するこういうカップル、現実に沢山いそう…!!というリアリティ。

 

また、映画を見た時は特にそこまで引っ掛からなかったのですが、舞台でキャラクターが生身の人間になったことで、エルサとアナは一国の王としては考え方も行動もあまりにも無責任、アレンデールの国民可哀想…私だったらこんな上司や君主は嫌だな…と思ってしまいました…。

アナ!!今日出会ったばかりの男と婚約するのも考えものだけどそれ以上にその相手に国政を放り投げて出奔するな!!!!!! 

自分はスペアだって嘆いてた(そういう未収録曲がある)けど、独身で子供もいない王が突如いなくなって、王位継承権暫定第一位の自分の真価が今こそ問われるという時に何の義務も果たさず自分も国を飛び出すとか、スペアの役割を全く果たしてないやんけ!!!と心の中で盛大にツッコミを入れてしまった。

エルサはエルサで、二幕でアナに対して「あなたが女王になればいい」とか言い出して、心中であっさりすっかりアレンデールを切っていたことがわかって幻滅。ずっと王冠のせいで抑圧されていたのはわかるけど、国民に対する責任感はないのだろうか。

モチーフが「雪の女王」だからエルサは女王でなくちゃいけなかったのはわかるけど、女王や王女という設定にもう少しふさわしい気構えを持つキャラクターであって欲しかったなあ。
実写版ジャスミンと比べると余計に差が目立ちました。

アナとエルサはどちらも女王には不向きだと思った。アレンデールは選挙とかで誰か別の為政者を据えた方がいいんじゃないかな・・・・・・。

 

そして一方ハンスに対して、「実は結構有能で、思っていたより良い奴だったのでは…?」と思いました。

その日出会ったばかりの名ばかり婚約者に国政を丸投げされて姿を消されて、突然国王代行として采配を任されるって…ハンスがたまたま権力欲の強い野心家でその気と能力があったから良かったけど、そうでなければ逃げ出すかアレンデールの人達に追い払われるかしていて当然だったのでは?

アナが出奔していた期間がどれくらいなのか分からないけど、しばらく後の場面で出てきたハンスはアレンデールの国民達との間にしっかり信頼関係を築いてるように見えた。「お前みたいなぽっと出の馬の骨の言うこと聞けるか」と皆に総スカン食らってもおかしくないよね…?相当上手く立ち回ったのでは?

しかもハンスが丸投げされたのは国が未曾有の天災に見舞われている時…平時でも大変なのに、普通に考えたら睡眠時間もロクに取れない状態で災害対応に駆けずり回らないといけない…とんだ貧乏くじを引いてしまったと言えなくもない。ハンスめちゃくちゃ頑張ったのでは…?

とか考えていたら、ハンス国王代行がアレンデールの皆と猛吹雪に立ち向かい奮闘し絆を育む心温まる番外編を見たくなってしまった。

作中ではハンスは悪者だけど、一幕はやっぱり普通にハンスは好青年でウェーゼルトンが悪役に見えるし、むしろそのままの展開ではダメだったのか?という素朴な疑問。捻りがなさすぎてダメかなあ。

 

だんだんハンスが尚隆とか斡由(※十二国記)みたいに見えてきた。「国が欲しいか?ならばお前に一国をやろう」と言ってポンと国をくれる麒麟がいればハンスは結構有能な良い王様になったのではないだろうか。そのうちどっかで馬脚は出ていただろうけど。

十二国の世界だったらエルサやアナは早々に失道してそうだし、ハンスは偽王として立って討たれるしクリストフは黄海で護衛業を始めてそう。
そして貧民街出身の平凡な青年アラジンは突如目の前に現れた世にも稀なる青麒麟(字は爺兄(ジィニィ))に見出され新王への道を歩み始める…!!それはまた別のお話!!

 

以下、キャスト感想。

 

・岡本エルサ

伝説が生まれる瞬間に立ち会って鳥肌。

一幕最後のレリゴーがそれはもう素晴らしかったんですけど、もう途中から号泣しちゃって自分の嗚咽がうるさくて歌を全力で聴けなくて後悔。
あああああああ岡本エルサああああああああああああああああ(号泣)

岡本エルサは後世に語り継がれると思うから皆ぜひ見てほしい……レリゴー一曲で見せてくれたドラマ……感情と表情の移り変わり、悲しみと侘しさと力強さ、解放感、映画版を凌駕するドラマチックな編曲と素晴らしい歌唱力、もう初日から200点スタンディングオベーション。客席も拍手爆発。

 

・三平アナ

今回初めて拝見したんですけど、身体能力の高さがすごくて思わず経歴調べちゃった…だって舞台の上で足元まであるドレスを着たお姫様のヒロインが悠々と側転するなんて度肝抜かれますやん!ここは二次元じゃないんですよ!!??

ハンスとのデュエットでも、アナというキャラクターに要求される水準以上に(無駄に)身体能力を駆使するポーズとかあってビックリしたけど、もしかしてキャストが三平さんだから取り入れた振り付けだったりする可能性…は流石にない…?いや本当に目ん玉飛び出そうになった。

三平さん、アナにすごくハマっていて良いキャラクターだったし、三平アナは無限に見たいけど、他の演目でもぜひ拝見してみたいので分裂してくれないかな………
岡本瑞恵さんも無限にエルサを見たいけど他の演目でも見たいです…3人くらいに分裂して欲しい……。

 

・小林オラフ

映画と違って女性の声なんですが、特に違和感ないし何よりパペットの操作がめっちゃ上手い上に歌とご本人の演技が最高!!!常にオラフが乗り移っているかのような表情をされていて、オラフのパペットと小林さんの表情をセットで眺めるのが楽しいの何の!!永遠に見ていたい、大好き!!!小林さんをオラフにキャスティングしてくれてありがとう四季、こんなオラフが見たかった〜〜!!!

 

アナ雪はこれからも何度か見に行く予定なので、今後の進化を楽しみにしています!