黄金羊の観劇記

観劇・映画・読書の感想を好き勝手に書いてます。東宝・宝塚・劇団四季中心、海外ミュージカル(墺英米)贔屓、歴史好き。

「中国嫁日記 ママたいへん編」感想

本編1〜7巻がたいへん面白く、発売を楽しみにしていた「中国嫁日記」のスピンオフ新刊。

 

買いたい気持ちはあったものの、数日間迷いました。日記部分の内容が「妊娠・出産」だったから。

不妊治療と流産の話である4巻&6巻は救われる気持ちで読めましたが、人工授精後は体外・顕微授精までは進まず、結局自然妊娠して最後は無事に出産まで至れた月さんの話を読んで、自分のメンタルがぐちゃぐちゃにならないだろうかという不安がありました。

 

しかし描き下ろし長編の「家購入編」の冒頭部分をネットで読み、これは思った以上に具体的な内容を書いてくれていそうだ、と思って即購入。

 

一読した後は満足感でいっぱいでした。

中国嫁日記は毎回描き下ろしの長編漫画の内容が濃くて面白く、描き下ろしにこそ価値があると思っていたけど、今回は本編もずっと面白かった。

内容の濃さで言うと、個人的には今まで読んできた「中国嫁日記」の中で一番だと思いました。

1〜7巻を読んで、この漫画は自分にとっては「物語」としてより「情報」として価値があり、その「情報」には鮮度があるので、出来るだけ早く読めば読むほど良い、と確信していたので、早めに買って読んで本当に良かったです。

既刊は数年遅れで読むことになってしまったけど、これから出る新刊は全部発売直後に買おうと思いました。久しぶりに新刊を追う漫画が出来ました。(今漫画で新刊を追っているのはよしながふみ先生と羽海野チカ先生の作品だけ)

ジンサンと月さんを人生の先輩として、背中を追わせて頂いてる気持ちです。

 

妊娠・出産は、私も今後出来れば良いな、月さん願いが叶って本当に良かったなあ、という暖かい気持ちで読ませて頂きました。

大変そうだけれど、苦労の中にも喜びと幸せ、新しい経験があって、羨ましく思います。

 

描き下ろしの家購入編は、井上先生や月さんが物件で重視する点、予算感、ローンの話など、本当に具体的かつ金銭感覚がめっちゃ身近で、まずそれがとても嬉しかったです…。

私は身近な親兄弟が高収入で、彼らが購入した家は今の私ではとても買えないようなものだったので、彼らを羨ましく思う気持ちと、自分の状況が情けなくも悲しい気持ちで、買える家の予算を考えるたびに落ち込んでしまっていたのですが、ジンサンと月さんの体験記を読ませて頂いたおかげで孤独感と劣等感がだいぶ薄れました。

不妊治療と流産の漫画を読んだ時もそうだった。もう本当にありがとう。中国嫁日記に毎回闇落ちから救ってもらっている私の心。

 

私も結婚してからもうずっと家が欲しくて、暇があれば色々なサイトで中古物件を探している状態だったので、家を購入したいと言う月さんの気持ちがすごくわかった。

欲しいよね、自宅。賃貸じゃなくてね。精神的な落ち着き、安心感が欲しいんだよね…。

 

井上さんと月さんが最終的に購入した家は、私だったらおそらく選ばない物件だったので、やっぱり必要な家や快適な家は家族によって様々だなと。井上さんと月さんと似たような物件に住んでいる友人がいるのですが、彼女も子持ちだったので納得しました。

 

今後人口が減っていく日本で家を購入することに対して不安をお持ちの井上さんの「多少損したとしても、月さんの笑顔がうちの正解なのです」という言葉が素晴らしいですねえ。井上さんの月さんへの愛の深さに毎回感動する。

 

そしてこちらも毎回感動させて貰っている、月さんの作中コメント&巻末コメント。

今回特に感動した言葉。

「この家で、ワタシたち家族なるダカラ!!」

「新しく引っ越してきた古い家をもう一度見回すとごくごく普通の家です。でも、私好みの庭があり、井上の好きな地下室もあり…ここでまた子どもがドタバタし、私たちが笑い、一家3人の生活が始まりました。なんてことはありません。もう大丈夫です。」

この「なんてことない」という言葉に、平凡で小さな毎日の大きさと幸せを感じる。不妊治療に流産に夫の会社の危機にと、一般の人が経験する可能性のある苦労の中ではかなり大きな苦労を乗り越えてきた月さんの口から発せられる、「なんてことない」という言葉の威力。きっと月さんはこれからまた何か大きな山があってもきっと持ち前の人柄と人徳で乗り切って行くんだろうなあ。

 

私、流産した後には本当に気持ちが落ち込んでしまって、「私が子供を産めないなら、世の中のみんな死んでしまえばいい」と思ったこともありました。

こんな自分の精神状態を形にして固めたり出来ないから、エッセイ漫画は私にはまだとても描けません。描けたら楽しいだろうなと思うこともあるけれど、エッセイを描くなら幸せな内容しか私は描きたくないです。ネガティブが増幅されてきっとそちらに引っ張られてしまう。定子様との幸せな日々だけを書き留めた清少納言の気持ちがわかる。

だから井上さんが作中で「この日記には基本的に楽しいことだけ描きたい」と仰っていた気持ちが良くわかります。

 

井上さん一家がこれからもたくさんの幸せに恵まれるように、陰ながら応援して行きます。

そして私にも、幸せ訪れますように!!!ノーモア闇落ち!!!光あれ!!!!!